「詐欺被害防止」朗読劇で訴え 横浜の作家、実体験を基に脚本

 作家や陶芸家として活動する吉屋えい子さん(80)=横浜市港北区=が劇団「坐(ざ)・ポルカドット」を結成し、29日に港北公会堂(同区)で旗揚げ公演を行った。吉屋さんの実体験を基に、被害が深刻な特殊詐欺への注意を呼び掛ける朗読劇を披露した。

 朗読劇「ふうてん老女と詐欺師」は自由気ままな1人暮らしを楽しむ高齢女性が主人公。「もしもし母さん、オレだけど」。ある日、そんな女性の元に不審な電話がかかってくる。女性に息子はおらず、すぐに詐欺だと気付いたが、寂しさや好奇心から詐欺師とやりとりを重ねていく。

 脚本は吉屋さんが書き上げた。数年前に実際、同様のケースに直面した。自宅にかかってきた不審な電話には余裕を持って対応し、警察に通報。だまされたふりをして受け渡し場所に赴いたが、現れた男は沈黙を決め込み、吉屋さんはパニックになってしまったという。結局、警察官が受け取り役を取り押さえたが、「予期せぬことが起きたとき、人は混乱してしまうことを思い知った」と実感を込める。日々発生する特殊詐欺に引っ掛かってしまう被害者心理を朗読劇で発信しようと、劇団をつくった。

 朗読劇には息子役の詐欺師以外にも、その上司を名乗る共犯者らが登場。複雑、多様化する特殊詐欺の手口を反映した。吉屋さん自身が主人公を演じ、朗読の活動などで知り合った30~70代の女性たちが脇を固めた。

 80歳で劇団をつくった吉屋さんは「挑戦することが大事」と話し、「人ごととは決して思わないで、特殊詐欺の被害に巻き込まれないよう劇を役立ててもらえれば」と話した。

実体験を元に特殊詐欺に関する朗読劇に取り組んだ吉屋さん=横浜市港北区の港北公会堂

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