新日鉄住金の中核子会社、新日鉄住金化学と新日鉄住金マテリアルズの統合新会社「日鉄ケミカル&マテリアル」がきょう1日、発足する。コールケミカルを主軸に機能材料や電子材料などを手がけるユニークな素材メーカーの誕生だ。研究開発力を強みに、狙うのは成長市場の捕捉。太田克彦社長に統合の狙い、今後の事業戦略を聞いた。(高田 潤)
――改めて統合の狙いをお聞かせください。
「新日鉄住金グループのセグメント子会社(製鉄以外)4社の中で、化学とマテリアルズはカバーする領域が最も近く、これまでも統合を検討したことはあった。だが、機能材料などの近接領域がまだ十分に育っていなかったこともあり、統合に至らなかった経緯がある。ところが、ここ数年でその近接領域が両社ともに成長。人材、財務、研究開発などの経営資源を集中した方が、成長市場を捕捉する上で、より強みを発揮できるとの判断に傾いた。つまり条件が整ったということだ」
「マテリアルズが手がける炭素繊維複合材の中間製品は新日鉄住金化学が供給してきた。ピッチ系(石炭系)なので規模はまだ小さいが、垂直統合は自然の流れといってよい。このほか顧客が重複する分野もあり、刻々と変化する顧客ニーズに迅速に対応するという面でも統合のメリットを十分に生かせるとの判断もあった」
――統合効果をどう見込んでいますか。
「統合効果というと、一般的にはコスト軽減効果ということになるが、その効果はそう大きくない。近接分野を持つと言っても厳密には両社の事業は重複しないし、製造拠点を集約することも当面はないからだ。今回の統合はコスト競争力の強化が主たる狙いではなく、成長市場への対応という面が大きい。例えば研究開発分野では、マテリアルズは新日鉄住金の研究所と連携してきたので、今後は新日鉄住金化学の研究スタッフとの連携を含め総合力が一段と高まる」
「機能材料あるいは電子材料の分野では、統合によって製造プロセスの深化が期待できる。例えば新日鉄住金化学の銅張積層板とマテリアルズのステンレス箔。それぞれのノウハウを融合することで、より効率的な生産が可能になるとみている。統合によって、市場情報がより多く集まることも、顧客ニーズへの対応という面で強みになる」
――製造拠点の集約は計画していないということですが、事業の見直しは進めるのですか。
「今は考えていない。旧2社ともにニッチながら特色ある事業を展開しており、現状ではそれぞれの事業を強化することが最優先となる。ただ、顧客ニーズの変化に迅速に対応するというのが基本なので、将来については柔軟に検討したい」
――将来の成長に向け、どのような戦略を描いていますか。
「新日鉄住金グループとしても、将来的に見込まれる自動車のマルチマテリアル化や電装化の進展、電池・半導体などの電子機能材料分野における新たな材料ニーズの拡大を受け、総合的な素材対応力を強化していく必要がある。そのような中で新会社としても、鉄をメインに、それを補完する素材と組み合わせていく『鉄+アルファ』の提案をすることによって、新日鉄住金グループが目指す総合素材対応力強化の一翼を担うことができると考えている」
企業概要
▽本社=東京都千代田区
▽資本金=50億円(新日鉄住金100%)
▽売上規模=約2400億円(18年3月期、旧2社の合算)
▽連結経常利益=約170億円(同)
▽従業員=約3200人(同)