紫のブラで女性権利熱唱に殺害予告

By 太田清

ゼレ・アスイルベクさん。インスタグラムから

 イスラム教徒が住民の多数を占める中央アジアのキルギスで、女性シンガー、ゼレ・アスイルベクさん(19)がユーチューブに「少女」というタイトルの歌のビデオクリップをアップしたところ、SNSなどで「削除してキルギスの国民に謝罪しなければ、殺す」などの脅迫を受けた。アスイルベクさんは紫のブラジャーにジャケットを羽織った姿で、女性の権利擁護を訴える内容の歌を歌っていた。英BBC放送などが伝えた。 

 ビデオは9月13日に公開され既に13万7000回以上視聴された。ビデオの中で「私はなぜあなたや、みんなの好むようにならなきゃならないの? 私には言いたいことを言う権利があるの。私はあなたに敬意を持つから、あなたも私に敬意を払って」とキルギス語で歌っており、アスイルベクさんは男尊女卑の伝統が根強く残る同国で女性の権利擁護を主張した歌であると認めている。 

 ビデオに対して、「勇敢な少女だ!」「すばらしい」「皆が口に出すのを恐れていることを言ってくれた」と賞賛のコメントがあった一方、「キルギスの恥だ」「淫乱を勧めている」「欧米では問題ないだろうが、ここでは許されない」など批判の声も相次いだ。高評価約2700に対し低評価約2300とほぼ拮抗している。 

 殺害予告を受け、警察は捜査を開始。アスイルベクさんは独りで外出できなくなったなど不安を訴える一方、「女性の権利について議論してほしくて、わざと挑発的な内容にした。家族も心配しているけど、値する行為だったと理解してくれている」と話している。 

 キルギスでは、男性が気に入った女性を連れ去り無理やり結婚させる「誘拐結婚」が頻繁に行われるなど、女性の権利を認めない風潮が問題視されている。(共同通信=太田清)

© 一般社団法人共同通信社