五島産業汽船 突然の運休 経営破綻か 全離島航路を休廃止

 長崎、佐世保と五島列島を結ぶ五島産業汽船(長崎県新上五島町、野口順治社長)は2日、全航路で船の運航を停止した。資金繰りが悪化し経営破綻したとみられる。従業員は同日までに解雇された。離島の生活や経済を支える重要航路は再開の見通しが立っていない。

 関係者によると、五島産業汽船は8月中旬に1回目、10月1日に2回目の不渡りを出し、銀行取引停止処分になったもようだ。

 九州運輸局によると、五島産業汽船は9月25日、佐世保(鯨瀬)-上五島(有川)の廃止を届け出た。さらに10月1日、長崎-上五島(鯛ノ浦)と佐世保(鯨瀬)-五島(福江)の休止届も提出し、休止期間を31日から1年間としていた。いずれも経営上の理由としており、九州運輸局は受理した。

 海上運送法に基づき休止や廃止の届け出は30日前と規定されている。九州運輸局は「休止や廃止の前例は他にもあるが、これほど急なのは聞いたことがない」と戸惑っている。

 五島産業汽船は1日に長崎県に運休を伝えた。2日は朝から本社や各港の営業所が閉め切られ、窓口に「会社都合につき、しばらくの間運休いたします」と通知が張り出された。突然の運休に利用者は困惑し、長崎県や関係市町も五島産業汽船と連絡が取れない状況が続いた。

 五島産業汽船は五島列島航路のほか、7~11月の週末に長崎-天草(崎津)を試験運航している。関連会社USAポートサービスが運航している上五島(有川)-小値賀-佐世保(宇久平)定期航路も2日から運休した。

 五島産業汽船の昨年の利用者数は、長崎-上五島10万9500人、佐世保-上五島5万6800人。昨年5月に開設した佐世保-五島は8月までに約3万人が利用した。東京商工リサーチ長崎支店によると、五島産業汽船は船舶売買に伴う損失などにより、今年4月期決算で約2億9千万円の赤字を計上していた。

 新上五島町の江上悦生町長は「運休の事態になって残念。関係機関の協力を得て、一日も早い運航再開に向け最善を尽くしたい」と話した。

閉鎖された窓口に張り出された運休の通知=長崎市、長崎港ターミナルビル

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