『あなたがしてくれなくても』(1)(2)ハルノ晴著 どうか一縷の望みを

 出会い系サイト、なるものに登録してみた。結婚相手を探す系の、そこそこ真面目なやつを選んだのは、そろそろ結婚を視野に入れた方がいいかもしれないなぁと今更ながら思ったりもしているからだ。歯切れが悪い言い方なのは、本当に結婚したいのか正直よくわからないところもあって、とはいえアラフォーも間近のこの歳で遊び相手を探すつもりは毛頭ないし、真面目なところに越したことはないだろうと思い、そのサイトにしてみた(何を以て真面目なんだという疑問は置いといて)。

 始めたばかりで勝手も何もわからないまま、会ったこともない男の人のプロフィールを覗いたりする中で、ふと思い出す。「ひとりぼっちで感じる孤独より、ふたりでいても感じる孤独のほうが辛い」みたいなことを歌っていたのは浜崎あゆみだったか。そんなことを思い出したのはきっと、本書を手にしたからだろう。

 32歳のみちは、4歳上の夫と結婚して5年になる。夫とは仲が悪いわけではないが、ひとつ欠けているものがあった。それはセックス。夫が触れなくなり2年が経つのだった。ある日、みちは会社の先輩・新名誠とふたりで飲むことになる。酒の勢いを借り、みちは新名にセックスレスの悩みを相談する。すると新名から返ってきたのは「うちもレスなんだよね…」という言葉。

 その日を境にみちと新名はお互いを相談相手としながら、それぞれのパートナーと向き合おうとするが……。

 ヒリヒリと痛くて、目を逸らしたくなる。夫はどうして触れてくれないのか。してくれない淋しさは募る、でも不倫をしたいわけではない。そんな葛藤が晴れない霧のように視界を覆い尽くす。

 わーっ!!なんだこれ!!浜崎あゆみまんまの世界ではないか!!

つらい、なんなんだろうか、夫よ。なに考えてるか全然わからないんだよ夫よ。朝早くにリビングでエロ動画観てた夫よ。「オレはみちを抱き締めることができない」ってどういう意味だ夫よ。そのくせ「オレ、みちと離れるなんて考えてないから」って都合良過ぎやしないか夫よ!!

 ゼーハー……。すみません取り乱しました。「みち!職場の男と一戦交えてしまっても私は許す!」と心の中でエールを送ってしまう自分もいますが、なんか、なんなんですかね結婚て。異なる意思を持った人間が、利害の一致で婚姻関係を結ぶ。そのことの難しさ、どうにもならなさ、苦しさ、やるせなさに気が遠くなる。

 本作、まだまだ続く模様。どう終わろうと結構なのですが、ひとつだけ、どうか、どうか私をはじめ、絶賛婚活中の独身男女が一縷の希望を持てるような終わりを迎えてほしいなと、そしてそんな希望を見いだすまで見届けたいと、思う次第であります。

(双葉社 600円+税)=アリー・マントワネット

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