女性のがん 心救え 経験者2人がSNS開設

 生死に関わる突然の告知、しかし必要な情報を得られない。時間ばかりが過ぎ、不安が募る-。自身も乳がんを患った女性2人が立ち上げた女性がん患者向けのSNS(会員制交流サイト)「ピアリング」が、悩みを抱えながら孤独に陥りがちな患者らの心のよりどころとなっている。必要な情報収集に苦労した自身の体験を踏まえ、患者同士が同じ目線で情報を共有。医療者や家族とも異なる経験者ならではのサポートを続けている。

 2人は上田暢子さん(46)=横浜市都筑区=と彩田ゆう子さん(40)=東京都日野市。病院の患者会で知り合った。

 上田さんは2015年末、告知を受けた。横浜市職員として多忙な日々、乳房に違和感があったり、疲れやすかったりして「がんかもしれない」との自覚はあったが、検診を先延ばしにしていた。悪い予感は的中し、「ショックを受け、地面の落ち葉だけを見ながら帰宅した」。

 16年2月に左胸の乳房を全摘出した。一部にとどめる選択肢もあったが「『がん友』がおらず、誰にも相談できなかった。幼い子どもにどう伝えるべきかと思い悩んだ」と振り返る。

 一方、彩田さんに乳がんが見つかったのは13年、妊娠3カ月の時だった。わが子を持つ喜びから一転、「死が脳裏によぎった」。進行の早いがんで、出産を待ってからの手術では「子どもの成長は見られない」と医師から伝えられた。

 妊娠中のがん治療の情報は、簡単には得られない。焦りばかりが募る中、たどり着いたのが都内で出産したがん患者のブログだった。妊娠中でも抗がん剤の種類によっては治療できると知り、入院を決断した。

 腫瘍は小さくなり、無事に子どもを抱くことができた。一部摘出手術を受けた現在は再発もなく経過観察中だ。日々成長するわが子との暮らしに喜びをかみしめ「ブログに救われた」。

 必要な情報を得られない恐怖は計り知れない。2人は同じ病気の仲間と、日常生活を送る上で必要な情報を共有できる場が大切だと感じ、乳がんや子宮がん、卵巣がんなど女性特有のがん患者が集うサイトを昨年7月に開設した。

 会員登録すると治療方法や、日々の思いや悩みを書き込み、励ましの言葉やアドバイスを得ることができる。登録しなくても公開投稿やイベント情報、抗がん剤服用時でも食べやすい料理のレシピが閲覧できる。

 現在の登録会員数は約1400人で、40代が半分以上を占める。「告知を受けた直後は絶望したコメントばかりだったが、交流を深めるうちに希望にあふれる文面になった会員もいた」と彩田さん。上田さんも「サイトを超えて日本中で地域ごとに患者同士のコミュニティーが生まれている」と笑顔を見せる。

 今後は、2~3カ月に1回開いている勉強会や催しなどを全国にも広げていきたいという。彩田さんは「地方の病院では十分な情報が入らないケースも少なくない。自らの体験を伝え、特に若年性乳がんの患者へのサポートを続けたい」と意欲を見せている。

 10月の「乳がん月間」に合わせ、体験談サロン「話そう!わたしたちのがんのコト」が27日午後2時から、横浜市青葉区のアートフォーラムあざみ野で開かれる。彩田さんがコーディネーターを務める。対象はがんを経験、または治療中の女性で、参加無料。事前申し込みが必要。申し込みは、男女共同参画センター横浜北電話045(910)5700。

ピアリングを立ち上げた上田さん(左)と彩田さん=横浜市神奈川区

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