「イメージ湧かなくなった」 横田めぐみさん54回目の誕生日

 北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=失踪当時(13)=の54歳の誕生日となった5日、救出を願う横断幕が神奈川県庁(横浜市中区)と川崎市内に掲げられた。県庁には母の早紀江さん(82)=川崎市川崎区=が訪れ、めぐみさんの写真とメッセージが添えられた横断幕を前に、一刻も早い解決を求めた。

 今年も、直接祝うことはできなかった。最愛の娘が突然いなくなって41回目の10月5日。「長い時間がたち、今どうなっているのかイメージが湧かなくなった。帰ってくればみんなでにぎやかにできるのに」。あまりに遠くなった13年の歳月を思う。

 いつもデコレーションケーキを囲み、娘の笑顔があった。「その後の生活は雲泥の差。本当にこんな日があったのかなと思う」。夫の滋さん(85)とともに今年もケーキを用意した。だが、ポートレートの娘は静かに見つめるだけだ。

 ただ、一筋の光を見る。近く開催の可能性がある米朝首脳会談に「何かきっかけが生まれてくるという淡い希望を持って見つめている」と早紀江さん。さらに、菅義偉官房長官の拉致問題担当相兼務にも「安倍総理と一番分かり合っている方。とても良かった」と期待を寄せる。

 県庁内に掲げられた長さ約10メートルの横断幕には、めぐみさんや家族の写真とともに「めぐみを助けてください 私たちにはもう時間がありません」と切実な言葉がつづられる。

 「風化が一番いけない。少しでも役に立てれば」とは黒岩祐治知事。早紀江さんは「拉致問題が日本にとってどういうことなのか、しんみり考えていただければありがたい」と話した。

 横断幕は川崎市川崎区の川崎競輪場北門横にも掲出。手掛けたのは夫妻が暮らすマンションの入居者でつくる「あさがおの会」で、田島忠代表(76)の説明を受けながら福田紀彦川崎市長らが見入った。

横断幕を前に取材に応じる横田さん(左から2人目)=県庁

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