100年の技術で販路開拓 大阪鋼管 佐世保から世界へ 工業会企業の「技術力」・3

 100年にわたり一つの技術を磨き続けてきた。
 抽伸(ちゅうしん)機と呼ばれる工作機械に設置された金属パイプは、100トンの力で引っ張られ、ダイス・プラグという二つの金型の間を通る。直径は34ミリから25ミリに細くなり、長さは8メートルから12メートルに伸ばされる。常温(冷間)で金型の中を通す(引き抜く)ことから「冷間引抜工法」と呼ばれる。製造可能範囲は、直径4ミリから165ミリのものまで幅広い。
 1902(明治35)年、野邊市治郎氏がドイツで習得した「冷間引抜鋼管」技術を初めて導入。21(大正10)年に大阪で創業した。東京や朝鮮半島の永登浦(ヨンドゥンポ)(現ソウル市内)に工場を増設するが、先の大戦で焼失、接収される。戦後従業員の一部は佐世保に引き揚げてきた。九州各地に炭鉱や造船所があったことから、佐世保市の旧海軍工廠(こうしょう)魚雷庫跡の払い下げを受け、事業を再開した。

「冷間引抜工法」で直径34ミリ(左奥)から25ミリ(右手前)に細くなる金属パイプ=佐世保市針尾北町、大阪鋼管

 主に電力プラントや化学プラントの圧力配管用パイプ、熱交換器用パイプとして用いられ、出光興産やJXTGエネルギーに供給している。プラントは「1日稼働を止めると1億円の損害が出る」とされ、稼働率を下げず設備能力を最大限に発揮できる生産態勢に貢献している。商社という“もう一つの顔”を持ち、60年に住友金属工業(現在の新日鉄住金)と資本・技術提携。ここから仕入れた鋼管を主に造船所に販売している。
 経営の多角化も進める。97年に不動産賃貸事業として旧本社・工場跡地に建設した「イオン大塔ショッピングセンター」をイオン九州に賃貸。スーツケースブランド「グリフィンランド」が通販で人気のクギマチ(佐世保市卸本町)も傘下に置く。「鉄鋼や造船は景気に左右される。“副収入”で安定した利益を出せば取引先に安心してもらえる」。坂根毅代表取締役社長(40)は語る。
 人口減少に伴う国内の需要減を見込み、海外戦略を打ち出す。自社製品の売り上げのうち海外向けは2%。「東南アジアのプラント向けの販路を開拓し、30%にしたい」(坂根社長)。
 現在の本社と工場は、再出発の地となった浦頭港を見下ろす場所にある。その先には、アジアにつながる海原が広がっている。

熱処理や引き抜き、洗浄作業などを経て完成した金属パイプの製品

◎大阪鋼管
 佐世保市針尾北町。野邊市治郎氏が1921年7月に創業した。代表取締役社長の坂根毅氏は4代目。従業員数は122人(5月現在)。東京や大阪など全国9カ所の営業所と4カ所の倉庫がある。主な取引先はJXTGエネルギーや出光興産。商社部門の取引先は三菱重工グループや大島造船所など。

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