金属行人(10月9日付)

 富士山の麓に東京ドーム約5個分の敷地面積を誇り、最大で1500ものテントを張れるオートキャンプ場がある。気象条件が整えば日本最高峰を頂上から裾野まで一望できるとあって、連休ともなれば早朝から受付を待つ車が長蛇の列をなす▼場内を後にするときも一苦労だ。出口の手前には車の進路に沿って滞在中のごみを回収するスポットがあり、トランクに詰め込んだまま持ち帰りたくはないキャンパーの心理も働く。指定の袋で廃棄できない対象物が幾つかあり、このうち容器類は素材ごとに1本ずつ専用のかごに分別する仕組みになっている▼中でも金属缶はアルミとスチール、燃料用の3種類に分かれる。カセットコンロ用のガスボンベはその場でスタッフが穴を開け、アルミとスチールの缶はラベルや硬さを確かめながら専用のかごに投入する。一日を通じて缶を捨てに来るキャンパーは途切れることなく、かごはいっぱいになっては速やかに回収されるサイクルを繰り返す▼広大な敷地でありながら、テントが片付いた後に缶が転がっている光景を目の当たりにする機会はそうそうない。アウトドアに不可欠な金属缶とうまく付き合うことで、快適なテントライフが受け継がれていく。

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