第30回:渋谷のチャレンジは、ダイバーシティの発信地に成り得る!?

若者の街の代名詞である「渋谷」だが、ダイバーシティーの発信地として、モデルケースになるかもしれない

今、渋谷が面白い。ひょっとすると、ダイバーシティの発信地として、モデルケースになるかもしれません。渋谷では、日本財団の主催事業「DIVE DIVERSITY SESSION」を毎年開催することが通例となりつつあります。今年はタレントのりゅうちぇるさんが、「渋谷ダイバーシティエバンジェリスト(多様性伝道師)」に就任しました。

制度や施策など、ともすると表層的になりがちなダイバーシティ推進を、渋谷区では「2030共創ワークショップ」や、働き方改革の本質的な面「ウェルビーイング」を取り上げたりと、骨太でありながら、エンターテイメント性やクリエイティブ度もある、楽しめる仕掛けを行っています。

また、クリエイティブワーカーの聖地として、9月13日にオープンしたばかりの「渋谷ストリーム」。その隣に併設する「渋谷ブリッジ」に入居している「渋谷東しぜんの国こども園 small alley」と「MUSTARD HOTEL」も興味深いです。

保育所型認定こども園「渋谷東しぜんの国こども園 small alley」は、その保育理念に「子どもたちが多様な体験や大人たちとの関わり合いを通して育まれる環境づくり」を掲げています。

「MUSTARD HOTEL」は、仕事で訪れるクリエイターやアーティストなどに対し、無料で部屋を提供する代わりに滞在期間中に作品を残してもらう、展示会やライブなどを共同で開催するなどの「CREATORS IN MUSTARD」を定期開催しています。より多様な層や感度の人々を集め、新たな価値創造を狙っているのです。

そもそも「渋谷ストリーム」そのものも、東急東横線旧渋谷駅の象徴だったカマボコ屋根を復刻したり、代官山駅まで延びていた旧線区間を活かしているという点で、持続可能性へとチャレンジしていることが窺えます。

他にも、あの日本を代表する世界的キャラクターであり、アイコンのキティちゃんが、渋谷駅ハチ公前の青ガエルにて、ダイバーシティをテーマにし、「いろいろな人がいて、性別・国籍・年齢・体・好きなこと・悩んでいること・・・その違いを力に変えて、みんなが一緒に生きる未来に向かって、一緒に歩きましょう」という内容の、自作の音楽「HELLO DIVERSITY, HELLO KITTY」をYou Tubeにて配信したことも注目されました。キティちゃんは、これまでもYou Tuberとして、SDGsを呼びかけていることでも話題になっています。

渋谷区は20年後の未来を見据えて、策定している基本構想の総合テーマとして、「ちがいを ちからに 変える街」を掲げ、「ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(受容)」という考え方を街づくりの軸に据えているのです。

真のダイバーシティを理解するなら、アカデミックな学術よりも、論理的な統計や動態よりも、机上の議論やレクチャーよりも、まずは渋谷から吸収する。これも一手となりそうです。

【SB-J コラムニスト・山岡 仁美】

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