ANA、航空業界で世界初のグリーンボンド発行

「総合トレーニングセンター(仮称)」の完成イメージ図(ANA提供)

ANAはこのほど、航空業界で世界初となるグリーンボンドを発行すると発表した。償還期間は10年で発行総額100億円を予定。発行日は未定だが、10月中の発行を見込む。同社は調達された資金全額を、同社訓練施設の建設資金に充当する方針。同施設では、世界最新鋭の設備を導入し、訓練などを通じて安全の確保、人材育成に取り組む。さらに省燃費機材の積極導入も継続し、世界の「環境リーディング・エアライングループ」を目指す。(オルタナ編集部=中島洋樹)

ANAグループは、今年2月、持続的な成長と価値創造に向け、ESG経営を中核とした「2018-2022年度ANAグループ中期経営戦略」を策定した。

本戦略期間におけるマテリアリティ(CSRにおける重要課題)として、同社は「環境」「人権」「ダイバーシティ&インクルージョン」「地域創生」の4項目を掲げている。これらに適切に対応することで、「社会的価値」と「経済的価値」を同時に創出し、企業価値の向上を図る方針を打ち出した。これはCSV(Creating Shared Value・共通価値の創造)への取り組みと言い換えることもできる。

同社は2008年に運輸業界・航空業界として初となる「エコ・ファースト企業」に認定された。そして、さらなるESG経営を進めていくにあたり、その一環として東京都大田区に「総合トレーニングセンター(仮称)」(以下、同センターと表記)を建設することとなった。

ANAホールディングス 広報・コーポレートブランド推進部の担当者(以下、担当者と表記)によれば、今回発行される航空業界では世界初となるグリーンボンドで調達された資金は、全額、同センターの建設資金の一部に充当されるという。現在、発行日は未定だが、10月中の発行を見込んでいる。償還期間は10年で、発行総額は100億円を予定。主幹事は野村證券(東京・中央、森田敏夫社長)、SMBC日興証券(東京・千代田、清水喜彦社長)、みずほ証券(東京・千代田、飯田浩一社長)の3社が担当する。

同センターは昨年7月から建設が開始され、2019年3月に竣工予定となっている。これにより、今まで複数の施設で行われていた同社のパイロットやキャビンアテンダント、整備士などのトレーニングをすべて同センター内で行うことが可能だ。担当者は、「VR(バーチャル・リアリティ)機器やシミュレーション機器など世界最新鋭設備を導入し、より本番に即した臨場感のあるトレーニングの実施を通じ、経営の基盤である安全の確保と、品質・サービスの源泉となる人財育成に取り組んでいきたい」と語った。

同施設には太陽光発電設備やLED照明器具、屋上緑化などを用いており、温室効果ガス排出抑制にも配慮した設計となっている。同社はこれらの取り組みに加え、保有する航空機への省燃費機材の積極導入の継続により、世界の「環境リーディング・エアライングループ」を目指すとしている。

© 株式会社博展