北欧ツーリングカー王者のPWR、セアトと共同で612馬力のフルEVプロトタイプ車『PWR001』を発表

 2018年のSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権でチームタイトルを獲得したPWRレーシングは「STCCでのレースとモータースポーツの持続可能性を表現した未来のツーリングカー」と題したプロトタイプモデル、『PWR001 エレクトリック・プロトタイプ』を発表した。

 最終戦マントープパークに合わせて製作、ラウンチが行われた同モデルは、PWRとクプラ・レーシングが共同で開発。セアト・クプラTCRのシャシーに電動コンポーネントを搭載したフルEVツーリングカーとなっている。

 セアトは独自のフルEVツーリングカーである『クプラTCR e-Racer』の開発も進めているが、これはその姉妹プロジェクトという位置づけだ。

 モーターの構成は非公開ながら最高出力は612PSを発生し、重量366kgに及ぶバッテリー容量は41kW、車両総重量は1510kgに収まっている。バッテリーのフル充電は1時間で完了し、レースペースで少なくとも15分以上の連続走行が可能だという。

 このプロジェクトの責任者であり、PWRレーシングの代表も務めるダニエル・ハグロフは、開発ドライバーに同チーム所属のミカエラ-アーリン・コチュリンスキーを指名。すでに彼女は幾度かのテスト走行を担当しており、その走行フィールを「完全に異なる画期的なドライブ体験」だと語っている。

「とてつもないパフォーマンスを秘めているのはもちろん、誰もが電気自動車には期待できないと思っている“音”の面でも、素晴らしいサウンドを聴かせてくれる」とコチュリンスキー。

「もちろん我々はまだ開発の初期段階にあるけれど、その可能性はとてつもなく巨大だと感じる。これはテクノロジー、環境への影響、そしてショーの観点から、モーターレーシングにとって正しい方向性だと思う」

 一方、今季も自らステアリングを握ってSTCCのタイトル争いを演じたハグロフも、次のように付け加える。

「今回、我々が披露したコンセプトカーこそ、スカンジナビアにおけるツーリングカー・レースの未来だと言える。私たちやパートナーにとって興味深いテクノロジーに挑戦する機会であると同時に、モータースポーツと自動車業界がさまざまな分野で新技術の課題を解決するチャンスでもあるんだ」

 将来的なシリーズ発足に向け開発が進んでいるE-TCRと異なり、このプロジェクトは現段階でプロトタイプの域を出るものではなく、どのテクニカルレギュレーションにも準拠していない。STCCとしても最終戦を前にTCRオーガナイザーとの現行規定準拠のアナウンスを行ったばかりであり、当面は内燃機関ツーリングカーでのシリーズを開催していく計画だ。

「自動車産業の世界は、内燃機関と組み立てラインによる大量生産方式が確立して以来、最大の進化がもたらされる局面を迎えている。その道筋を表現するためのコンセプトカーでもあるのだ」と語るのは、同プロジェクトを後援し、PWR001のプロジェクトマネージャーにも名を連ねるSTCC AB代表のハンス・バース。

「私たちはすでに、さまざまな技術レベルで電化されコネクテッドとなった自動車に慣れ親しんでいる。そしてほぼすべての自動車メーカーは、この方向性を推進すべく大規模なプロジェクトを持っている」

「しかし同時に、これらの技術はまだ確立された分野が限定的で準備ができておらず、堅牢で信頼性あるテクノロジーとすべく、これからの開発作業が重要な意味を持ってくるだろう。だからこそ、我々はパートナーの能力と技術を結集してモータースポーツにその開発フィールドがあることを示し、イニシアチブを持って取り組もうと考えているのだ」

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