明和電機展

 アート作品といえば、普通は一点物。有名な作品となれば高い値段が付く。バブル時代にゴッホの「ひまわり」に50億円超の価格がついたことを覚えている人もいるだろう▲一方、工場で大量生産される品をアートと呼ぶことはあまりない。安い価格で効率的に生み出されるとしたら、それはせいぜいアートの複製品だろう▲そんな固定観念を壊そうとしている現代美術作家がいる。「明和電機」というアートユニットをプロデュースしている土佐信道さんだ。長崎市の県美術館で「明和電機ナンセンスマシーン展」を11月11日まで開催中▲自ら社長と名乗り、作品を製品と呼ぶ。人前ではいつも作業着。まるで本物の中小企業の社長のよう。そうして、魚の骨の形状をした電気コード「魚(な)コード」やメロディーを発する「オタマトーン」などのユニークな立体作品を次々と発表▲それらを一点物にせず、外注して量産販売したり、作品を見せるパフォーマンスをしたりして、多くの人に触れてもらう。そこに土佐さんの表現活動の主眼がある▲アートが工業製品になれば、アートは誰もが楽しめるものになる-という土佐さんの話に、そういう見方もあるのか、と思う。美術館では子どもが売店で購入したオタマトーンと楽しそうに戯れていた。芸術の秋、たけなわである。(泉)

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