【解説】カネミ油症とは?

 カネミ油症は、カネミ倉庫(北九州市)が米ぬか油製造時の熱媒体としてポリ塩化ビフェニール(PCB)をカネカから購入し、これが油に混入、西日本一帯で販売して発生した。PCBは一部ダイオキシン類に変化。長崎県などで被害を広げ、1968年10月に新聞報道で発覚した。

■PCB

 分子中に塩素を含む有機塩素化合物の一種。熱に強いなどの特性から、変圧器やコンデンサーの絶縁油、可塑剤や塗料、複写伝票に使われるノーカーボン紙の溶剤などに広く使われた。だが毒性が強く、環境中で分解されにくいことなどが問題となり、70年代には日本を含めほとんどの国で生産や使用が禁止された。使用禁止後も変圧器などに含まれるPCBが未処理のまま残され、保管中に行方不明になったり、環境中に漏れ出したりすることが問題になった。

■混入原因

 カネミ倉庫は鐘淵化学工業製のPCBを米ぬか油の脱臭工程で使用。ステンレス製蛇管が内部に設置された巨大な脱臭装置に油を満たし、250度まで加熱したPCBを蛇管内に循環させて間接的に油を熱していた。
 68年1月末、蛇管から大量のPCBが油に流れ出たとされる。当初、この蛇管にピンホールが三つ見つかり、PCBが蛇管を腐食させて穴を開けたとみられた。
 しかし、その後の裁判の過程で、カネミ倉庫が脱臭装置の温度計保護管の間口を広げる工事で蛇管に誤って穴を開けた「工作ミス」が原因だったとの説が出る。この開いた穴から約300キロのPCBが混入。カネミ倉庫はミスに気付いた後も汚染された大量の油を廃棄せず、正常な油と混合させながら「再脱臭」し点検せず出荷したとされる。
 しかし68年以前から油症の症状があったとする証言もあり、ピンホールからの混入もあったとする見方もある。

■油症の症状

 油症について故原田正純医師は「病気のデパート」と表現した。吹き出物など皮膚症状のほか、全身の疾病が続発、併発。肝臓障害、心臓疾患、貧血などたくさんの疾病を1人が抱えるのが特徴。「突然意識を失う」「全身に痛みがある」などの症状も。初期の死因は、がんが多い。全身の痛みに苦しんだり、急な下痢で亡くなったりした例、内臓出血、頭蓋内出血、死因不明の例も多い。

■被害者

 今年3月末現在の認定患者は死亡者を含めて2322人(うち長崎県964人)。県内には468人が暮らしている。
 全国油症治療研究班の診断基準に基づき診査し、知事が認定する。診断基準は2004年にダイオキシン類PCDFの血中濃度が追加された。12年の救済法に基づき、発症当時食事を共にしていた認定患者の家族を一定の条件の下で患者とみなす「同居家族認定」が加わった。
 この他、1万人を超える未認定患者が想定される。また、被害者の子どもや孫ら次世代への被害も懸念されている。


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