航空機部品加工で有名な(株)朋栄工業が民事再生法申請

 (株)朋栄工業(TSR企業コード:260032123、法人番号:7060001001209、宇都宮市不動前2-2-46、設立昭和33年5月、資本金3000万円、加治康正社長、従業員38名)は10月9日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し同日、監督命令を受けた。申請代理人は村上達明弁護士(西村あさひ法律事務所、東京都千代田区大手町1-1-2)。監督委員には小畑英一弁護士(LM法律事務所、東京都千代田区永田町2-11-1、電話03-6206-1310)が選任された。
 負債総額は約23億5200万円(平成30年4月期決算時点)。

 昭和7年創業。金属表面処理では栃木県内有数の設備を整備し、42年には機械事業部を開設するとともに機械精密加工や治工具の設計製作を開始した。平成1年には日本で数少ない米国ボーイングの特殊行程認証を取得し、航空機部品の治具の設計から加工、表面処理(メッキ)、組み立て、検査に至るまで一貫した生産体制を確立。加工では5軸制御マシニングセンターを駆使するほか、表面処理・塗装では高度な品質点検システムを導入し、国際特殊工程認証システムのNADCAPを取得した。
 平成24年4月期にはボーイングが台湾で進める航空機部品工場整備について直接契約を締結し、栃木県内有数の航空機部品製造業者に成長。しかし、相次ぐ投資に連動して金融債務が急速に肥大化していたうえ、対外的な信用を維持するために以前から在庫の調整などによる不鮮明な会計処理が行われ、これが数年前に表面化して信用が失墜した。
 このため、栃木県中小企業再生支援協議会の支援を仰ぐとともに、再建スキームとして金融債務を劣後ローンに切り替えるほか、(株)とちぎネットワークパートナーズ(TSR企業コード:262222205、法人番号:9060001025032、宇都宮市)を引受先とする優先株式を発行するなどして、栃木県も含めて各方面からの強力な支援体制が整えられた。
 しかし、27年4月期~29年4月期には連続して赤字を計上するなど、経営計画とは大きな乖離が生じるようになったため、第二会社形式による再建を模索。スポンサーとして米国企業が名乗りを挙げ、29年9月に受け皿を設立し、29年12月には加治金属工業(株)から現商号に変更した。
 しかし、米国企業の支援計画が実行に移されることはなく、経営資源を主力の金属表面処理・メッキ加工に集約させ、付帯事業として行っていた機械加工から撤退したことに加え、人材の流出などで正常な経営を行えなくなり、30年4月期の売上高は約6億7200万円まで落ち込んだ。資金繰りも限界に達し、今回の措置となった。
 現在、スポンサー候補として(株)新潟事業継承パートナー(TSR企業コード:200319990、法人番号:3110001003698、新潟市東区)との間で基本合意書を締結し、同社の支援・協力の下で事業の再生が図れるよう具体的な協議を継続している。

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