田原さんデビュー作 「角川つばさ文庫」小説賞で金賞  児童小説「オバケがシツジの夏休み」 本の世界に導く「一冊」に

 佐世保市在住の田原答(こたえ)さんが、デビュー作となる児童小説「オバケがシツジの夏休み」(KADOKAWA)を刊行した。「読書になじみがない子どもにも取っ付きやすい話。気軽にページをめくってほしい」と話している。
 主人公の眠田涼(小学5年生)が、祖父母宅の裏山で空飛ぶ大きな米つぶみたいなオバケ「シツジ」と出会う冒険物語。実は、眠田家は由緒正しき霊能力一族だった。一見かわいらしいが毒舌でマイペースなシツジを筆頭に、一癖あるキャラクターたちに振り回される涼。戸惑いながらもさまざまな騒動に立ち向かい、成長していく姿がユーモラスに描かれている。
 小中学生を対象にした児童文庫「角川つばさ文庫」の第6回小説賞一般部門で金賞を受賞。奥行きのある魅力的なキャラクター描写が高く評価され、141作品の中から選ばれた。
 市内で生まれ育った田原さんが物語を書き始めたのは、高校生のころ。友人との会話から生まれたファンタジーや恋愛話を膨らませ、遊び心で物語に仕立てた。書いた作品を楽しんでくれる友人の姿を見て、「書くことが自分を表現する最適の方法」と感じた。
 趣味で書き続けていたが、子ども向けの話は今回が初めて。「子どもが本を全く読まない」という友人のひと言がきっかけだった。その子の最初の一冊になるような笑って楽しめる話を書こうと発起。KADOKAWAが運営するインターネットの小説投稿サイト「カクヨム」に投稿し、サイトを通じて応募した。
 受賞のメールを受けとったときは「応募したことを忘れていて詐欺だと思った」と笑う田原さん。現在は来年1月に発売予定の続編の執筆に励んでいる。子どもたちを本の世界へと導く「一冊」になる瞬間を思い浮かべながら、新たな物語を生み出していく。
 「オバケがシツジの夏休み」は新書判、216ページ。税抜き640円。

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