運輸業の温暖化対策ランキング 1位は川崎汽船

WWFジャパンは9日、運輸業31社の温暖化対策ランキングを発表。上位3位は川崎汽船、JR東日本、小田急電鉄だった。一方で、気温の上昇を2度未満に抑えるというパリ協定の目標に整合した長期的ビジョンを設定する企業、再生可能エネルギーを活用する数値目標を定める企業は一社もなかった。(サステナブル・ブランド ジャパン=橘 亜咲)

WWFジャパンは2014年から日本企業の温暖化対策の底上げを目的に、定期的に業界別の温暖化対策ランキングを発表してきた。これまでに電気機器や食料品、小売業・卸売業、金融・保険業などのランキングを発表し、今回は第8弾となる。ランキングは2017年に発行された環境報告書などを参考に、「長期的なビジョン」「削減量の単位」「省エネルギー目標」「再エネルギー目標」「目標の難易度」「ライフサイクル全体での排出量把握・開示」「第3者による評価」の7つの指標に基づき作成された。

運輸業のなかでも、海運業は陸・空運業に比べて「省エネ目標」や「ライフサイクル全体での排出量の把握・開示」「第3者検証の有無」において得点が高かった。1位となった川崎汽船は、投資先の温室効果ガスの排出量を明らかにするなど情報開示が高く評価された。

しかし川崎汽船と商船三井、日本郵船の全3社は「目標の難易度」に関しては無得点だった。背景には、世界の海上輸送量が2050年までに2倍になることが予測され、国際海事機関(IMO)が同年までに温室効果ガス排出量の総量を半減すると掲げるなかで、目標設定を総量ではなく原単位で行っていることがパリ協定に整合していない問題がある。一方、総量による削減管理を行うJR東日本や小田急電鉄は満点を獲得した。

WWFによると、温室効果ガスの削減には自社の事業範囲だけでなく、上流・下流を含むライフサイクル全体において排出を管理する必要がある。製造業などと異なり明確なバリューチェーンが見えづらい運輸業であっても、ビジネスの全体像を把握し、間接的に関わりのある分野に取り組みを広げることが求められる。

さらに、膨大な燃料を消費する海運業や空運業においては、再生可能エネルギーへの切り替えとそれに伴う技術革新が課題になると指摘。全体を見ても、現段階では「再生可能エネルギーの導入を進める」と言及する企業はあっても数値目標を掲げる企業は一社もなかった。

温暖化対策については、今月8日に国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)で、現状のままで温室効果ガスが排出され続けると早ければ2030年までに地球の平均気温が産業革命前と比べて1.5度上昇すると発表されたばかり。企業を含め国際社会には、温暖化対策を着実に行い、対策を加速させる新たな取り組みが求められている。

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