「避妊するな」金正恩氏の命令に苦しむ北朝鮮の女性たち

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によれば、北朝鮮の金正恩党委員長は3年前、避妊と妊娠中絶を禁止し、これに背けば懲役3年の刑に処すとの命令を出した。避妊も中絶ももともと法で禁じられていたのだが、形骸化していた。しかし少子化が進んで軍の兵員充足までが難しくなるに及び、改めて厳命したのだ。

このようなムチャクチャな規則のせいで、北朝鮮社会には様々な弊害が生じている。RFAが今月5日に伝えたところでは、北朝鮮女性の多くは仕方なく、ヤミで出回る質の悪い子宮内避妊器具を使用している。しかも長期にわたり装着したままでいるせいで、炎症に苦しむ事例が増えているという。

北朝鮮では、まともな性教育が行われていないため性感染症が拡大した悪しき前例がある。

「避妊・中絶の禁止」もまた、誤った女性観から生まれた差別的な政策であると言えるだろう。

そもそも北朝鮮女性が妊娠を避けようとするのは、慢性的な経済難の中で子どもを育てるのが難しいためだ。現在、北朝鮮経済の柱となっているのは、市場で商売に精を出す女性たちだ。

男性はろくに給料も出ない職場に縛り付けられているために、一家を養うことも難しい。その代わりに女性たちは、朝から晩まで市場で働いている。それに加え、国家が行う増産キャンペーンや勤労動員にも駆り出される。そのような環境の中にあっては、「子どもをどんどん生め」と求める方が無理なのだ。

北朝鮮はまた、女性に多産を求めるだけで、医療面でのケアも行っていない。平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、RFAに対し次のように語っている。

「わが国ではいま、女性たちの婦人科疾患が社会問題になりつつあるが、適切な診療を受ける方法がない。病院で注射を打ってもらうにも薬は市場へ行き、自費で購入しなければならない。しかしペニシリンなどの医薬品の値段が高すぎて、庶民にはとうてい手が出ない」

金正恩氏が本気で人口を増やしたいと思うなら、まずは男性たちを無意味な職場から解放し、女性と力を合わせて家計を支える機会を与えなければならない。しかしそれをすると、北朝鮮のいっそうの市場経済化につながり、これまでのような国民統制が難しくなる可能性が高い。

つまり北朝鮮における人口の減少は、体制の限界から生じていると言うこともできるわけで、その責任を女性たちに押し付けたところで、何ら問題の解決にはつながらないのだ。

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