義理も道理も

 義理を通す、義理堅い。人が社会で生きる上での道理や筋を表す言葉に「義理」がある。日本人は好んで使う気がするが、もちろん、それを意味する言葉は各国にあって、英語では「duty(デューティー)」などと言うらしい▲米国のこの動きには、義理も道理も出る幕がない。核を完全に手放せ、と北朝鮮に言えた義理ではなかろう。昨年12月、5年ぶりに米国が臨界前核実験をしていたことが分かった▲トランプ政権下では初めて。朝鮮半島の非核化に向け、ようやく北朝鮮との交渉が始まったというのに、その一方で米国は核開発の新局面に入っている▲今年2月に公表された米国の核戦略の指針には、小型の核弾頭の開発も盛り込まれた。核兵器を局地的に用いる「使える兵器」にしていく考えで、先の実験はその性能を試す一環とみられる。今年12月にも実験を計画しているという▲どんな核実験も許されるはずはないが、すでに持っている核兵器の性能を実証するのではなく、「新型」の開発に向けた性能テストというのであれば、核大国の暴走と言うほかない▲「使える核兵器」の開発は世界を脅かし、怒らせ、核兵器をなくせという世界の流れの逆をいく。米朝交渉への悪影響もあり得る。義理や道理とは程遠い、「おごれる国」のそしりは免れない。(徹)

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