佐世保と安全保障 水陸機動団新編へ・3 相次ぐ誤算 際立つハード面の遅れ

 ショベルカーが土砂を掘り起こし、資材を積んだ大型トラックが行き交う。建物はまだ骨組みだった。
 佐世保市中心部から南に位置する崎辺地区。水陸機動団のうち、水陸両用車(AAV7)を運用する戦闘上陸大隊を置くため、新たに分屯地を建設している。配置される隊員は170人。敷地には隊庁舎や体育館などを建て、訓練場も整備する。
 当初の計画では3月の新編に間に合うはずだった。しかし、地元関係機関との調整に時間がかかり、着工が遅れた。
 九州防衛局は完成時期について、部隊の配備に最低限必要な施設整備は2019年3月までずれ込む認識を示している。それまで戦闘上陸大隊は相浦駐屯地に暫定配備される。
 九州防衛局は昨年4月、崎辺地区で工事に関する住民説明会を開いた。しかしその後、工事の遅れについて地元への説明はない。九州防衛局は「現段階で確定的なことが言えないため」と理由を説明する。
 西天神町公民館長の西川信一さん(81)によると、ミキサー車やトラックなど1日平均で100台ほどの大型車両が崎辺に向かう道路を通過。通勤通学の時間を避けるなどの対策は取られているが、もともと片側1車線の狭い道路のため流れが悪くなっているという。
 西川さんは言う。「国防の重要性は分かるが、地元を無視するような進め方は疑問だ。新編後の部隊運用についても、地元に丁寧な説明があるのか懸念が残る」
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 機動団を運用する上で“象徴”とも言える装備、AAV7も部品不足などに伴い納入が遅れている。戦闘上陸大隊が発足する際は30両が配備される計画だったが、最大でも7両にとどまる見通しという。
 重要な訓練の機会が減りかねない状況について、陸上自衛隊の関係者は「戦車の操縦にたけている隊員が担うし、すでに外国でも訓練をしている」と不安を一蹴。防衛省も「当初の計画との比較ではなく、その都度の状況で効率的に訓練をするよう検討している」と影響を否定する。
 隊員が、戦力化に向け訓練を重ねる一方で、部隊を置く場所の整備と訓練に必要な装備品に誤算が相次いでいる。新編が目前に迫る中、ハード面の「不備」は際立つ。

分屯地の建設工事が続く崎辺地区=佐世保市崎辺町

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