佐世保と安全保障 水陸機動団新編へ・4完  期待と反発 誘致望む離島、漁業者は懸念

 有明海に面している佐賀市の佐賀空港。送迎用の展望デッキから海を望むと、滑走路のすぐ近くにノリの養殖網の支柱が無数に突き出ているのが分かる。
 防衛省は、この空港に水陸機動団を輸送するための新型輸送機オスプレイの配備を予定している。機動団の本部を置く陸上自衛隊相浦駐屯地に近く、部隊の迅速かつ効率的な輸送に適しているという。
 これに伴い、空港西側の農地約33ヘクタールに駐屯地を造成する計画。しかし、土地を所有する佐賀県有明海漁協の組合員らから理解が得られるか不透明だ。
 徳永重昭組合長は「海で事故があれば、環境を戻すのは並大抵ではない。実害はなくても、風評被害がある」。日本一を誇るノリ産地への影響を懸念する。
 「国防のため」「隊員が増え、経済効果がある」。地元に容認の声もある。しかし、徳永組合長はつぶやく。「われわれが犠牲になれ、ということか」

 一方、離島の五島市は水陸機動団に熱い視線を送る。市議会は2015年に6千人を超える市民の署名を添え、陸自誘致の請願を採択。これを受け、市は防衛省に要望を続けてきた。将来、3千人規模となる水陸機動団で、配置が決まっていない数百人規模の部隊を呼び込みたい考えだ。
 念頭には、衰退する国境離島の防衛がある。五島列島は中国や朝鮮半島に近いが陸自は「空白地帯」だ。
 野口市太郎市長は「離島防衛の部隊なら、島にあってしかるべきだ」と強調。今のところ沖縄県への配備が取りざたされているが、それでも「五島での訓練を通し、離島の実情を理解した部隊になってほしい」と期待を寄せる。
 市防衛協会副会長で、福江商工会議所会頭の清瀧誠司氏は「島民自ら島を守ってきたが、人口が減りそれができなくなった」と背景を説明。無人島が増える懸念もあり「国土を守るためにも必要だ」と語る。

 2月上旬、佐賀県神埼市で陸自のヘリが住宅地に墜落。小野寺五典防衛相は事故後、オスプレイ配備に関し明言を避けている。徳永組合長は驚きつつ、静かに語った。「やはり事故は起こり得る」
 国の安全保障政策と地元の意向に、どう折り合いを付けていくのか-。水陸機動団の発足まで1カ月に迫った。=おわり=

オスプレイの配備が計画されている佐賀空港。滑走路のすぐそばでもノリ養殖は盛んだ=佐賀市

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