【消費増税】県内企業に警戒感 駆け込み需要後「半年冷える」

 「消費マインドの冷え込みが心配」。安倍晋三首相が改めて15日に表明した2019年10月の消費税率10%への引き上げに対して、神奈川県内の企業関係者は口々に消費への影響を懸念した。対応策に知恵を絞る一方、政府には消費促進に向けた政策を注文。消費者からは一定の理解とともに、「まずは政治改革を」との声が上がった。

 自動車や住宅などの耐久消費財については特に増税の影響が心配されている。総合不動産のリストグループ(横浜市中区)は「不動産に関する消費税は新築の建物部分だけにかかるため、注文住宅などに一定の影響はあるものの実質的には限定的」とした上で、「むしろ顧客の引き締めマインドが心配。現場での丁寧な説明などに努めて、マイナスの影響をできる限り抑えたい」と話した。

 買い物客でにぎわうそごう横浜店(同市西区)の担当者は「(増税によって)厳しい状況になるのは間違いない」と来年10月以降を予測。「消費意欲の減退を食い止められるように、さまざまな施策を考えて対応したい」と語った。

 家電量販店のノジマ(同区)担当者は「さらなる業務改革や新たなビジネスモデルの構築などの自助努力をしていくが、増税後の景気落ち込みを最小限に抑える施策も期待したい」と政府に求めていた。

 日本銀行横浜支店の新見明久支店長は「駆け込み需要とその反動の大きさ、そして家計の可処分所得が減るという二つのインパクトがあるが、前回の増税時よりはマイナスのインパクトは小さくなるのでは、と思っている」とした。軽減税率や幼児教育無償化の実施のほか、増税幅が2%にとどまることがその理由だという。

 浜銀総合研究所の小泉司上席主任研究員は、県内の個人消費への影響について「駆け込み需要とその反動はそれなりに出てくるだろう。前回の消費増税と同じく、約半年は冷え込むのではないか」と予想する。

 一方で、前向きの設備投資が進む可能性も指摘。「中小の小売店でキャッシュレス決済で商品を買うと増税分の2%をポイントで還元し、その分を政府が補助する仕組みも検討されている。これが正式に導入されれば一気にキャッシュレス決済のシステム導入が進むのでは」と期待。食料品は軽減税率が適用されるが、これに対応した計算ができるシステムや機器を供給している企業もビジネスチャンスになるという。

消費者「まずは政治改革を」

 少子高齢化が進み、増大する医療費や介護費への対応と教育環境の充実が求められる中、次世代へのしわ寄せを懸念する消費者は一定の理解を示す。

 横浜市西区の女性会社員(44)は「仕方がない」と冷静に受け止める。わが子の将来を案じつつ、政府がこれまでに税率10%への引き上げを2回延期している経緯を踏まえ、「子どもたちの将来を考えると、これ以上先延ばしはできない」と漏らす。

 同市南区の50代の主婦は「諸外国に比べればまだまだ消費税は低い方だとは思う」と話す。ただ、消費税導入前や税率3%だった時代の記憶があり、「現行の8%でも高いと感じている」。今後は「高価なものは買いにくくなる」と諦め顔だ。

 一方、相次ぐ政治家の不祥事を念頭に、不満の声が上がる。

 「順番がおかしい」。同市西区の藤棚商店街で買い物中の女性(73)は怒りをあらわにする。与党が政治改革の必要性を訴えながら参院の議員定数を増やしたことなどを踏まえ、「歳費や議員定数を減らすなど、優先すべきことはあるはず。なぜ先に国民に負担を強いるのか」と訴えた。

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