映画「きみの鳥はうたえる」

新鮮味のない既視感のある組み合わせに期待値は高くなかったが、石橋静河に「私は違う」と言わんばかりに母が魅了してきたものとは違う手法で様々な表情や躍動を見せつけられた柄本佑と染谷将太はそれに見事に応えておりラストが近づき「あゝ、ここで終わる」と半泣きになったところで予想通りの寸止めで終わるが、席を立った直後から涙が止まらなくなる。副題は「アンド・ユア・バード・キャン・シング」で、ビートルズのこの曲の歌詞に初めて興味を持つことになったが、歌詞にある二人の間合いが圧倒的な映像に込められていた。参考楽曲はニーナ・シモンとジョニ・ミッチェルだったという。各曲を身体に沁み込ませて再び観る楽しみを与えてくれる秀逸なサントラ含めた音楽映画とも言える。原作佐藤泰志の映画化は四度目だが高評価の過去作全てを凌ぐものとなり、三宅唱監督作品としてもこれまでで一番の出来である。ここがピークでないことを願うばかりだ。(LOFT HEAVEN:澤山恵次)

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