<隠れた名盤> 荒木とよひさ『ラスト・ポエット』 作詞家のオリジナル作品集。歌声はどこか楽しげ

荒木とよひさ『ラスト・ポエット』

 紫綬褒章の受章歴もある作詞家の生誕75周年を記念したアルバム。本作は、提供ヒット曲のセルフカバーではなく、2013年以降に歌手活動を再開した後のオリジナル作品集。だが、そこが面白い。

 全14曲はシングル4作、アルバム2作からのセレクトと本作のための新曲2曲という構成で、長き人生を振り返った『我何処へ』や、亡き母への思慕をつづった『ひらひらと櫻』などしんみりさせる曲もあるが、収録曲の大半は酒場で浜辺でHOTELでと、とにかく遊びまくる男性が主人公。確かに、決して美声ではないがどこか楽し気な荒木の歌声には後者の方がピッタリだ。

 特に、『Venus』(タッキー&翼)などを手掛けてきた羽場仁志が作曲し、荒木が作詞した楽曲の印象が強い。“いろいろあった”男女の夜更けを歌った『ちょっとイイ女』や、そろばんを弾かれても、涙もろさを武器にされても女性にジェラシーやロマンスを抱く男の『シャバダバダ』から、血気盛んな男性が浮かぶのは、明るくお気楽に聞こえるメロディーの影響も大きいかもしれない。

 本作を聴けば、生涯現役でいたいと願う人の励みになるはず。

(ポニーキャニオン・3000円+税)=臼井孝

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