これが「つるの育休」 つるの剛士さんに聞くパパの極意

つるの剛士さん

 まずはこちらを読んでみてください。

 ●弁当作りで朝はお腹イッパイ

 ●(子ども)4人とも卵焼きの味の嗜好が違うのが困る

 ●人の料理が食べたくなる

 ●ママたちがランチ楽しみなのわかる

 ●チビ達の(学校の)プリント複雑すぎ

 ●テーブルの角にプリントの山

 ●たまに雪崩

 ●食べ終わった弁当箱早く出せ

 ●ポイントカード忘れたときの絶望感

 ●送り迎えだけで半日終わる

 ●外出中の雨に絶望感

 ●夕食後洗い物終わったらもう寝る時間…。

 (抜粋)

 「これ、私のことだー」。世のママ(パパ)はそう思うに違いありません。

 書いたのは、5人の子どもたちのパパでもある、タレントつるの剛士さん。ブログ「一カ月の家庭休業(育休)を終えて」で読めます。全文はコチラ→https://lineblog.me/tsurunotakeshi/archives/7833504.html

 「こんなにリアルに“主婦(夫)業”が分かっているタレントさんっていったいどんな人?」。2年前、同僚から教えてもらって読んだ私は吹き出してから思いました。そのつるのさんに今年インタビューするチャンスがやってきたのです。

 目の前のつるのさんは、ごく自然体。好奇心いっぱいの男の子がすくすく大人になったような。心のあり方はそのままに、ウルトラマンダイナになったり、バラエティーで人気になったり歌を歌ったりしている感じでしょうか・・。

「イクメンって言う言葉にちょっと違和感があって。ぼくなんかがイクメンとかってもてはやされていること自体が、めちゃめちゃださい」

 移り変わりの激しい芸能界で、計3か月間2度の育休を取得。周りの人は心配したが、つるのさんの育休取得は逆に話題に。「理想のパパランキング」でも堂々第1位になった。

 その育休の日々を綴ったのがあのブログだ。「いやーつらい。育児休業というより“家庭訓練”。毎日同じことの繰り返しで、いらっとくることが多くて、でも子どもに当たるわけにもいかないから、毎晩エプロンを外した後でノートに書きためていた」。リアルな心の叫びだったんですね…。

 エプロンは終日つけっぱなし、一度もコンタクトを入れず、へアセットもしなかったという。「だって人に会いませんからね」。毎朝5時半に起床して作った弁当も、「最初は茶色ばっかりだったんだけど、(読者から)茶色ですよってコメントで言われて改良しました。そのうち、作らなくても冷凍食品でめっちゃうまいのあるじゃんって気付いた」。そうなんですよね…。

 娘達の髪を「編み込みとかして、ママみたいにかっこよく結う」のが目標の一つだったが、「結局うまくできなくて。でも僕なりに今風にゆるくふわっと結うの、いいんじゃないかって思っていた」。ところが、登校する子どもたちの後を、犬を散歩させながら静かについて行ったある日。「娘がぱっと(髪留めを)取ってほどいたんですよ! あっ、超さみしいって思った」。(後で理由を聞いたところ、「学校で運動があるからあんまりふわっとしているととれちゃうから」とフォロー(?)があったとか)

 「家庭訓練」を終えたつるのさんには分かったことがある。「訓練終わってからが本番。一番良かったのは、家庭内に理解者が増えること。ママがどんなときにいらいらして、どうして疲れているのか。僕はもう分かっているから話が聞ける。これね、経験してみないと分からない。だから(育休を取る男性には)少なくとも2週間、まじめに水場に立ってみてと言います。そしたら分かる」

 そうだっだ―。朗らかに語るつるのさんを前になぜか涙腺が刺激されてきた私。

 女性の社会進出が進み共働き家庭が増えても、家事の負担は女性に集中しがち。育休を取る男性もまだまだ少ない。働き方を変え、男性も家事に参加しやすい社会の仕組みにすること、家事シェアをすることはもちろんだけど、家庭内でママ達が一番求めているのは「分かりあう」ことではないでしょうか。

 けっこう必死でじたばたしている毎日。些細で生活臭く、だれからも褒められるでもない出来事。そんなことを共有できて、「今日こんなことあったよ」と、一日の終わりにほっと話し合えること。

 「家事タスク表」を作成して、超細かな家事まで書き出してきっちり分担するより、平和な気がする―。そもそも、家事タスクを洗い出して表にするのがまたたいへんそうだし…。

 「子育てよりまず自分と奥さん」というのがつるのさん流の極意。インタビューの後日、ブログをのぞいてみたら、元スタイリストの奥様と二人で結婚記念日をお祝いするコラムがあった。

 ツーショットに添えられた言葉は「あらためてありがとう」。んまぁ…。ダイナ、いいなぁー。(共同通信文化部記者・中井陽)

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