製造現場の安全対策強化、鉄鋼連盟が行動指針策定 経験不足の事故増加受け

 日本鉄鋼連盟は鉄鋼業の労働災害防止の取り組みを強化する。鉄鋼の製造現場ではここ数年、経験年数の浅い作業者が被災するケースが目立つ。こうした事故の要因分析を踏まえ、具体的な対策事例を盛り込んだ行動指針をこのほど策定した。この指針を会員会社やその協力会社に共有してもらい、鉄鋼製造現場の災害防止につなげる。

危険体感教育の充実など

 鉄鋼連盟はきょう18日、横浜市で開催中の全国産業安全衛生大会で指針を報告する。

 製造業の安全衛生対策をめぐっては昨年、鉄鋼連盟など複数の製造業団体が参加する「製造業安全対策官民協議会」が立ち上がった。同協議会は昨年10月、神戸市で開いた会合で、経営層のリーダーシップによる体制強化、技術革新を生かした取り組みなど、四つの行動指針を「神戸宣言」としてまとめた。

 神戸宣言は、重点的に取り組むべき課題の抽出と、その対策を検討するよう各業界に求めており、鉄鋼連盟はこれを受け「経験年数の浅い作業員の事故対策」を重点取り組み課題と位置付け、対策を検討してきた。

 鉄鋼業界では、ベテラン層の離職、新卒者の採用増、高齢者の中途採用拡大などを背景に、経験年数が10年未満のスタッフの割合が増している。鉄鋼連盟によると、こうしたスタッフの事故件数がここ数年、増加傾向にあるという。

 鉄鋼連盟は策定した指針の中で、経験年数の浅い作業員の被災事例を分析し、課題を抽出。それを踏まえ、具体的な対策例を示した。

 例えば、経験年数の浅い作業員は総じて安全感性・危険予知能力が低く、墜落や転倒、機械への巻き込まれ事故が目立つ。このため安全感性を高めることを課題とし、危険体感教育の充実などを対策として示した。

 鉄鋼連盟は2006年に安全衛生推進本部を設置。事故事例の共有や安全講習会の開催などを通じ労働災害防止の取り組みを進めてきた。この効果もあって重大事故は07年以降減少傾向にある。ただ、事故の撲滅には至っておらず、一段の対策強化が求められている。

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