金属行人(10月18日付)

 関西の普通鋼電炉の10月生産が大幅に増える見通しだ。業界筋の試算では約42万トンと、ここ数年で最多の生産量という。鉄筋、形鋼、平鋼、鋼板などいずれも生産増になるようだ▼増える理由は、建設需要が膨らんできていることと、9月の台風で工場の屋根やシャッターが被害を受け、生産・出荷が計画を下回ったため、10月に急いで生産して出荷しなければならない事情があるようだ。「屋根が壊れていると、製鋼の煙やばいじんの飛散問題があって操業しにくい。雨天での操業では事故も考えなくてはならない」とメーカーの担当者は話す▼シャッターも台風の風でつぶされ開閉できなくなり、製品出荷が滞った。この状況は特約店の倉庫も同様で、9月は製品の入出庫のやり繰りに苦心したようだ。多くのメーカーが応急処置で屋根を修繕したが、屋根工事業者の人手が足りず、完全改修は年末から来春くらいになるという。シャッターの改修も同様だ▼生産増で原料の鉄スクラップは高値圏が続き、副資材も値上がりしているが、メーカーは追加値上げに慎重だ。販売増で採算悪化を凌いでいるようだ。「見方次第だが今はベターな状況。焦らず価格維持を図れば自ずと次が見えてくる」。踏ん張りどころだ。

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