電子版でよみがえる福永武彦 生誕100年、あの怪獣映画の原作者

By 関かおり

 代表作『草の花』で知られる作家福永武彦の生誕100年を記念して、小学館は電子版の全集の配信を始める。福永の長男で作家の池沢夏樹氏が特別監修した。10月19日の第1回配信では、『草の花』を中心に、初期作品『塔』や学生時代の書簡を収録。月に1巻ずつ20巻まで公開する。

今年、生誕100年を迎えた作家の福永武彦

 さて福永武彦を知らない人のために先に豆知識の解説をしますが、この人は東宝の依頼を受けて怪獣映画『モスラ』の原作を書いています。同時代の作家中村真一郎と堀田善衛というそうそうたる面々との共作で、映画公開に先駆けて雑誌に掲載されていました。その作風から「愛と孤独と死の作家」と枕詞がつく福永先生ですが、モスラではノリノリで大暴走しています。

 ここからはまじめな解説。福永は1918年生まれ。42年に作家の加藤周一や中村真一郎らと文学同人「マチネ・ポエティク」を立ち上げ、詩作の可能性を探った。『草の花』で作家としての地位を確立。純文学だけでなくSFやミステリーなど幅広いジャンルの小説を発表し、72年には『死の島』で日本文学大賞を受けた。79年に死去したが、今も根強い人気がある。

 電子版の全集では、最初に発表された初刊本と、福永が後に書き換えた決定版の両方を併載。11月16日の第2回で配信される予定のデビュー作『風土』は雑誌連載版から決定版まで4種類入っており、電子書籍ならではのボリュームとなっている。学生時代の部誌などを含む全著作のほか、構想ノートやメモなどの付録もついている。1巻2500円(税別)。ちなみにモスラ原作の『発光妖精とモスラ』は来年2月に配信予定。  (共同通信=関かおり)

© 一般社団法人共同通信社