2018年のMotoGP日本GPへ、2年ぶりに日本人女性ライダーが参戦する。岡崎静夏(KOHARA RACING TEAM)が、2016年以来となるMoto3クラスへのワイルドカード参戦を果たすのだ。2年ぶり2回目となる世界選手権の舞台。金曜の初日セッションを前に、岡崎に今大会を迎える心境を聞いた。
「2年前は、Moto3というテレビでしか見たことがなかった世界を走れることが、すごく楽しみでわくわくしていたんです」
笑顔でそう切り出した岡崎。岡崎は2016年の日本GP、ワイルドカードとして参戦している。しかし2年前と今大会では、また少し違った心境でこのレースを迎えていた。
「今回は参戦2回目で、世界選手権の衝撃とMoto3ライダーの走りを知っている分、彼らと走るうえで自分がどうしたらいいのかをすごく考えています。前回みたいに、Moto3で走れるのが楽しみ、というテンションではないですね。前回よりも冷静に、自分がどこまでできるのか、と考えているんです」
2年前とはまだ顔ぶれも変わらないライダーもいるはずだ。ライバルと目しているライダーはいるのかと聞くと、「ワイルドカード同士は負けたくない。…とお互い思っていると思いますけれど」という答え。
「海外ライダーみんなから、勉強できたらいいなと思っています。ちょっとでも着いていけたら、と」
2016年、最初のMoto3ワイルドカード参戦では予選34番手から26位、実質最下位フィニッシュで厳しい戦いを強いられた。今回の目標は「ポイントを取りたいです」ときっぱり。15位以内のフィニッシュを目指す。
「ポイントを獲った、という証を残したいんです。(そのために)どこまで頑張ればいいかな、という思いもあるんですけれどね」
2016年のワイルドカード参戦が決まったとき、岡崎は井形とも以来21年ぶりとなる日本人女性ライダーの世界選手権参戦として大きく注目を浴びた。『女性ライダー』という観点から関心を集めることは少なくない。岡崎は、それを前向きにとらえている。
「レースは男女混走です。女性として扱われたくないという女性ライダーもいるけれど、私はまったくそう思ってないんです。私はそこを盛り上げてもらって、そのおかげで全日本ロードレース選手権に参戦し続けられていますから」
「女性の方が、アドバイスをもらえたり応援してもらえたりする。それがあって今の自分の技術があり、KOHARA RACING TEAMでMoto3にワイルドカード参戦ができています。それから、女性ライダーということで取り上げてもらえれば(バイク業界全体が)盛り上がります」
岡崎は現在、日本の女性レーシングライダーとして筆頭の存在だ。しかしその本人には、若い女性ライダーたちに自分を超えていってほしいという思いがある。
「今、ミニバイクに乗っている若い子たちが私を超えて、(先日スーパースポーツ世界選手権300でチャンピオンを獲得した)アナ・カラスコ選手みたいに世界で活躍してほしいなと思います。ただ、私は日本で記録をつくりたい。今年は私が年齢的にMoto3に挑戦できる最後の年です。できることはやっておきたいんですよ」
Moto3に2度のワイルドカード参戦を果たした岡崎の姿は、彼女を目標と定める若い女性ライダーにとって輝いていることだろう。そんな岡崎は今大会で、まずは「自分が理想とする走りができるようになること」を目標に定めている。
「決勝レースまでのセッションでほかのライダーとなるべく多く絡んで、勉強して、吸収して、それを決勝レースで自分のものにしたいです。でも、転倒は絶対にしたくない。セッション全部で完走すること。それも目標のひとつですね。世界選手権のライダーにひとつでも近づきたい。そう思っています」
岡崎静夏が挑む2度目のロードレース世界選手権が、間もなく幕を開ける。