先崎学「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」鬱屈や怒りも率直に描くがユーモア溢れ暗くない。しかし映画に関わったこと契機で板挟み生まれ...という経緯は戦慄。

回復期本人執筆は稀有。凄く論理的に最悪期のことも客観主観交え綴る。「うつは心でなく脳の病。死にたがる病」「必ず治る、自殺だけはいけない」と医師の兄と自身繰り返す。羽生氏など関係性凄くわかる。藤井ブーム全く知らず療養。鬱屈や怒りも率直に描くがユーモア溢れ暗くない。しかし映画に関わったこと契機で板挟み生まれ…という経緯は戦慄。映画業界は外部に窺い知れぬNG多くそれを知人に伝えることもままならぬ、他人事でない。最悪期には小説も漫画も読めず、簡単なルポ、料理写真しか見られない。トッププロだが七手詰め解けず五手詰めに挑む自らに泣く。テトリスなど落ちゲーならできる…自分も全く同じ状況に陥った経験あり明晰な文に滲み入る(読めないが書けるのだ)。イジメ体験も真摯。新聞は読めないのにネットニュースは見られる…という一文にかなりハッとした。紙媒体読まずネットだけ反応しているらしき層に思い馳せ…。(尾崎未央)

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