輝き増す満天の星 雲仙仁田峠プレミアムナイト

 長崎県雲仙市の仁田峠を期間限定で夜間開放するバスツアー「雲仙仁田峠プレミアムナイト 秋の部」が25日に始まる。本番を前に、地元ガイドや関係者が行程を最終確認する試走が17日にあり、同乗して一足お先に「極上の一夜」を体験した。
 
 ■趣向を凝らす

 ツアーに参加するのは7度目。「もうプレミアムじゃないでしょ」と冷やかされたが、何度も見たい景色がある。また実行委の趣向を凝らした仕掛けも楽しみ。今秋はハロウィーン仕立て。ガイドがドラキュラ風のマントを脱ぐと、ホテルのドアマンの姿が現れた。「それではご案内します」。出発を告げる声が、夜の雲仙の扉を開く。

 バスの内では、ガイドの軽快なトークが続き、気が付くと仁田峠。徒歩でロープウエー乗り場までの道中、スタッフ手作りのランタンが足元を照らす。よく見ると、カボチャやお化けなどがあしらってある。約50個の光に見守られ、駅舎に到着した。

 ロープウエーで約3分間の空中散歩。眼下には光に浮かぶ紅葉のじゅうたん。まだまばらだが、本番までには見ごろを迎え、色とりどりの紅葉が出迎えてくれる。一気に標高約1300メートルの妙見岳駅へ。気温もぐっと下がり、下界との差は8度近くになる。襟元を立て、展望台へ登った。
 
 ■穏やかな時間

 展望台では、合図とともに一斉に消灯。頭上に満天の星が現れた。この瞬間がたまらなく好き。仕事用のカメラを置いて、大の字に寝転んだ。県内で最も高い場所から見る星たちは、目が慣れるにつれて輝きを増す。澄んだ空気が肺と心を満たす。眠ってしまいそうなくらい穏やかな時間。でも目を閉じるなんてもったいない。流れ星が横切った。時間よ止ま…、願い終わらないうちに消えた。かなわぬ願いとカメラを抱え、仕事モードに戻る。

 時折、雲がかかる天気だったが、夜景は島原半島の街明かりに加え、対岸の天草までくっきり見えた。天候不良で星が見えない時のためにプラネタリウムも準備。ちゃんとその日の星空が駅舎の中で投映されるという。

 「時間ですよ」。後ろ髪を引かれる思いで下山。全行程、あっという間の2時間。バスを降り、ふと体が冷えていたことに気付く。極上の一夜にプラスワン、温泉に立ち寄って芯まで温まる。湯船の中、星空を思い出す。今度はカメラを持たずに来てみたい-。心に焼き付けた星空に願いを託し、白濁の湯に深く身を沈めた。
 
 ◆雲仙仁田峠プレミアムナイト 10月25日~11月3日の10日間。午後7時から1日2便運行(週末は4便)。大人3千円、小学生1500円。予約はJTBのホームページから。問い合わせは同社長崎支店(電095・824・2400)。

妙見岳駅展望台からは星空と島原半島の夜景が楽しめる=長崎県雲仙市小浜町
出発前にはガイドによる歴史解説もある=長崎県雲仙市、雲仙温泉街
仁田峠駐車場から駅舎までの歩道に設置されたランタン

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