豪雨被災地で精霊流し あす広島・坂町小屋浦で祈り

 災害被災地にボランティアバスを出したり現地で支援活動をしたりしている長崎県諫早市飯盛町の団体職員、草野紀視子(きみこ)さん(48)は21日、西日本豪雨の被災地、広島県坂町小屋浦地区で犠牲者の精霊流しをする。秋祭りにかわって開かれる復興祭で、みこしの代わりに精霊船をと依頼された。船には町のシンボルマークを記したちょうちんを提げ、鎮魂と復興への祈りを込める。

 草野さんは、熊本地震や九州北部豪雨でも被災地でボランティアに取り組んできた。8月中旬、死者15人、行方不明者1人の被害が出た広島県坂町の小屋浦地区に入り、土砂の除去作業や文房具などの物資を届ける活動に取り組んだ。その際、同地区のボランティアセンターの男性責任者に「10月に復興祭をする。そこで精霊流しをしてくれないか」と依頼された。男性は毎年この地区で開催されている秋祭りが災害で中止にならないよう、復興祭を企画した主催者。みこしの代わりに長崎の精霊船が浮かんだという。

 草野さんは精霊流しをした経験はなく、船の製作費用を工面できるかも不安だった。しかし「被災者の皆さんが元気になり、亡くなった方の慰霊になるのであれば」と決意した。

 諫早に戻り、長崎市の建設会社に精霊船の製作を依頼。船の建造費、現地への運搬費、衣装代など費用は計約40万円に上ると試算した。会員制交流サイト(SNS)で寄付を募り約6割は賄ったが、残りは自分で払う予定。「人の役に立てることにお金を使わせていただいている。それが私の幸せでもある」と草野さんは話す。

 精霊船は10月15日に完成した。長さ約6メートル、高さ約4・5メートル。みよしに「小屋浦」の文字を記し、ちょうちんには坂町のシンボルマーク、飾りには広島をイメージしてもみじをあしらった。完成した時、草野さんは「亡くなった方々のみ霊と、そのご家族や被災地の方々の心の支えになりますように」と祈ったという。

 当日は草野さんが理事長を務めるボランティア団体、NPO法人有明支縁会のメンバー10人とともに精霊流しをする。草野さんは「被災者のみ霊が西方浄土に行けるように見送りをするとともに、二度とこの地区で災害が起きないように願いながら歩きたい」と思いを語る。
 
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 精霊流しは21日、小屋浦地区の天地川公園で開催される小屋浦地区復興祭に合わせて実施される。同日午後4時半から、地区の中心を流れる天地川の上流から河口までを2時間かけて練り歩く。午後2時からは本県出身の歌手、さだまさしさんのコンサートも開催される。

完成した精霊船の前でまといを持つ草野さん=大村市富の原2丁目(草野さん提供)

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