障害者雇用水増し、神奈川は260人超 5市町、法定届かず

 障害者雇用の水増し問題で、神奈川県内の公的機関で計261・5人の不適切な算定があったことが22日、神奈川労働局の調査で分かった。基準に対する不足数は計232人で、調査前の8人から大幅に拡大。調査前は法定雇用率を満たしていたとする県教育委員会や県警のほか、5市町が法定を下回った。同問題を巡り、県内自治体の全容が明らかになったのは初めて。

 同労働局は「故意の水増しとは思いたくない」とした上で、「民間に率先して障害者を雇う立場の公的機関で大きな違いがあったことは遺憾」と指摘。再発防止と雇用率達成に向けた取り組みの支援を進める意向を示した。

 調査結果は昨年6月1日時点の障害者雇用実態で、各機関から今月2日までに報告を受けた。それによると、最も不適切算定が多かったのは県教委の141・5人で、次いで相模原市75・5人、県警20人、県知事部局12人、平塚市10人の順。雇用率は県教委や県警のほか、相模原、横須賀、平塚、厚木、中井の4市1町が法定を下回った。

 大半が障害者手帳の未確認で、健康診断結果で判断していたり社会保険や給与の書類でカウントしていたりするケースもあった。横須賀市と真鶴町は算定の基礎となる職員数に誤りがあったという。

 県などは問題発覚後、障害者雇用者数や不適切算定数を実人数で公表していたが、今回の調査は重度障害者を2人分、時短労働者を0・5人分としてカウントするなど補正後の人数でまとめた。

◆県教委「雇用率達成へプレッシャー」

 「時々の担当者や管理職に、法定雇用率へのプレッシャーがあった」。障害者雇用の水増し問題について県教育委員会は、国から3回にわたり勧告を受けたことが背景にあったと説明。障害者として申し出ていない職員らの同意を得ず、人事情報を基に算定していたという。

 10月3日の県議会文教常任委員会。桐谷次郎教育長は「法定雇用率のプレッシャー」に言及した上で、「あまりに配慮に欠けた行為が長年にわたり継続してきた。大変申し訳ない」と謝罪した。「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」の認識不足なども挙げた。

 県教委は法定雇用率未達成を受けて作成した「障害者採用計画」の実施率を巡り、2007、08、11年度にそれぞれ国から勧告を受けていた。3回目の勧告翌年は「人事情報を緻密に収集した」(担当者)ところ、雇用率が前年度比0・36ポイント上昇したという。

 県教委が「ルール」と位置付ける国の指針も長年守られてこなかった。本人が同意していない場合、個別対応が難しいとし、当該職員も含む全教職員に謝罪の文書を配布。今後は障害者手帳の保有について、所属長を通じて調査する意向を示している。

 共生社会実現に向けて県教委は、知的障害のある生徒が通常学級で学ぶ「インクルーシブ教育」を推進しているだけに、教育委員会委員を含め関係者は水増し問題を重く受け止める。文教常任委では、委員から「本人がまったく関与していない中で障害者として算入したことは許せない行為」「本質を突き詰めず、法定雇用率の数字に追われることがあってはならない」と苦言が呈された。

神奈川県庁

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