『栞』 俳優二人の熱演に、とことん泣かされる

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 元理学療法士の監督・榊原有佑が自身の経験をもとに、理学療法士の葛藤を描いたヒューマンドラマです。病院で働く真面目で温厚な性格の主人公・高野は、疎遠だった父親が脳腫瘍で入院してきたことや、患者さんの病状が悪化したことなどが原因で、仕事への限界を感じています。そこに入院してきたのは、試合中に半身不随となってしまったラグビー選手。明るく、懸命にリハビリを続ける彼と高野の絆を描いた本作。監督が、実際に病院で働いていたということもあり、とてもリアルなストーリーに心を強く揺さぶられます。

 医療映画はたくさんありますが、お医者さんを主人公にした作品ばかりで、理学療法士というお仕事にフォーカスした作品はとても珍しい。理学療法士の仕事って、リハビリ室の先生というイメージしかなかったのですが、この映画を観て、リハビリの患者さんのペースに寄り添い、心のケアまでもしなければならないこのお仕事の尊さに頭が下がる思いがしました。そして、私たちが接することがなかなかない、大変な思いをしている患者さんたちのことも。

 高野を演じるのは三浦貴大。仕事への苦悩を感じながらも、患者さんを見る姿は最高に優しくて、リハビリの様子を見ているだけで泣けます。明るさの中に隠した辛さを抱える男を自然体で演じる阿部進之介にも注目。男二人の演技に散々泣かされてしまいました。★★★★☆(森田真帆)

監督:榊原有佑

出演:三浦貴大、阿部進之介

10月26日(金)から全国順次公開

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