乗客に「みにくい黒人」で批判殺到、ビデオ視聴百万回超

By 太田清

言い争う乗客の男性とゲイルさん(左)。ユーチューブから

 バルセロナの空港を離陸しようとしていたロンドン行きライアンエアー航空機内で19日、年配の白人男性が隣に座った英国に住むジャマイカ出身女性(77)に対して、席を移動するよう要求、大声で怒鳴るなどした。2人のやりとりは別の乗客が携帯電話で撮影しユーチューブにアップしたところ110万回以上視聴され、男性への批判が殺到した。男性が「みにくい黒人のくそったれ」など人種差別的発言をしたためだ。CNNテレビなど米英メディアが一斉に報じた。 

 またライアンエアーも、男性を降ろしたり、警察を呼んだりしないまま離陸したことから「人種差別を許容した」と批判を浴び、一部でボイコットの呼びかけが始まったほか、英国の国会議員も批判。メイ首相の報道官も「人種差別は嫌悪されるべき」と発言するなど騒ぎは拡大している。騒動は単なる乗客間のいさかいにとどまらず、人種差別発言に極めて厳しい欧米社会の実態を浮き彫りにした形となった。 

 女性はデルシー・ゲイルさんで、通路側に座っていたところ、男性が窓側の席に行こうとした。ゲイルさんは関節の疾病のためすぐ立ち上がれなかったことからトラブルに。映像には男性がゲイルさんに席を移動するよう要求し「力ずくでも移させるぞ」などと怒鳴る様子が写っている。ゲイルさんがジャマイカのアクセントで英語をしゃべったことから、男性は「くそったれの外国語でしゃべるな。ばか」などとののしった。 

 ゲイルさんも「におうよ。シャワーを浴びた方がいい」などと“応戦”したが、「人種差別」発言をした男性の分が圧倒的に悪く、批判は男性に集中している。客室乗務員が割って入り、ゲイルさんを別の席に移動させたことで騒ぎは収まり、航空機はそのまま離陸した。男性の身元などは公表されていない。 

 ライアンエアーはツイッターで「このビデオについては知っています。警察に事案を通報しました」と報告するにとどまっている。 (共同通信=太田清)

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