【太陽シャーリング50周年】〈天谷武社長に聞く〉溶断一筋、技術・品質力磨く 省力化投資で作業改善

 新日鉄住金の中国地区拠点シャー工場、太陽シャーリングはきょう10月24日、設立50周年を迎えた。全国的にも珍しい造船向け切板供給が主力で、単一シャー工場として月産約4千トンの加工能力を有する。さらなる社業発展に向けての展望を、今年6月に第4代社長に就任した天谷武氏に聞いた。

――50周年を迎えての感想から。

 「50年間、社業を支え続けてくれた諸先輩方、社員、取引先、株主、ユーザーに感謝の言葉しかない。社業継続は、地域に馴染み、溶断一筋で技術・品質を鍛錬し続けたことで、お客様に可愛がられてきたことが大きい」

太陽シャーリング・天谷社長

――直近の事業環境は。

 「今年度は主要ユーザーであるJMU呉事業所のコンテナ船連続建造からVLCCへの船種変更に伴う建造計画の狭間に差し掛かる。JMU呉としても設計・建造ペースを極力上げるべく尽力されており、当社への切板発注も期初予想より前倒しに出ている。そのためこの7~9月期は造船以外も含めて月間切断量は2500トン程度と見ていたが、2800トンで推移している。また、VLCC向けの切板はコンテナ船より面取り工程などが増えるため、生産負荷に見合った付加価値をアピールしていきたい」

――造船以外の分野開拓を進めている。

 「2018年度上期は受注構成の多様化を図ってきた。幸い鉄鋼需要環境が良く、建築、産業機械、プロジェクト関連と引き合いが増えている。造船以外の分野への販売量は、前期が月間平均900トンだったが、今上期は1100~1200トンに増加。期初計画では1500トンを見込んでいたが、手間が掛かる作業も多く、課題は残る」

――目下の課題は。

 「工場操業は厳しいが、労働時間の適正化は至上命題であり、働き方改革への対応は今後の太陽シャーの課題の一つでもある。そのために人手を要する精整作業などへの省力化投資も積極的に実施する。今年9月に面取り作業を軽減する自走式の設備を4基導入。精整作業自体の負荷を下げる切断機の改良も模索する。開先にも手を入れていきたい」

 「今後1~2年間で現有の工場建屋・事務所を最大限活用し、加工用のスペースをねん出する。工場に併設する4階建て事務所は使い切れていない部分が多く、一部を工場作業用途に改装することも検討している」

――陣頭指揮で心掛けることは。

 「モットーは『安全・安心・ワクワク』。特に安全には力を入れてる。今上期にも小規模投資を実行し、ホイストクレーンの衝突防止対策に自動停止センサーを組み込み、熱中症対策にクールミストを導入した。安全は整理整頓から。下期も4S活動を推進し、工場両端部に自作の鋼製棚を置くことで、4Sを徹底する」

――50周年事業について。

 「11月2日に広島市内のホテルで関係者のみで式典を開催する予定。記念誌を作成し、株主や浅利重法相談役(前社長)の寄稿などを掲載する。ホームページも刷新し、事業活動が分かりやすく、採用活動の一環に学生が閲覧しても会社への興味が湧く内容とする予定だ」

――今後の展望は。

 「50年の延長戦として溶断一筋でどこまでやれるかに挑戦。また客先から溶断以外に穴あけ、曲げ、溶接などの要望があれば都度、検討していきたい。新日鉄住金グループの強みと、50年間で培ってきた太陽シャーリング独自のブランドイメージを上手に生かし切り、事業拡大につなげたい」(小田 琢哉)

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