運のない巨人と阪神、競合を恐れない日本ハム くじ引きで見るドラフト

競合することが予想される藤原恭大・吉田輝星・根尾昂・小園海斗(左から)【写真:荒川祐史】

大瀬良、山崎康など今季タイトルホルダーもくじ引きで入団

 いよいよ25日に迫ったプロ野球ドラフト会議。1位指名につきものなのが、重複指名の選手の交渉権を、くじ引きで決めるおなじみの光景だ。当たりくじを引いて“ゴッドハンド”と呼ばれた球団関係者も多いが、過去5年間のドラフト会議での重複指名によるくじ引きの“当選確率”を紐解いてみた。

 12球団の過去5年間のくじ引きの結果を集計すると、次のようになる。

◯セ・リーグ(カッコ内は当たりを引いた1位指名選手)

広島 当たり2回、外れ3回(2013年大瀬良大地、2017年中村奨成)
ヤクルト 当たり2回、外れ4回(2013年杉浦稔大、2017年村上宗隆)
巨人 当たり0回、外れ5回
DeNA 当たり2回、外れ4回(2013年柿田裕太、2014年山崎康晃)
中日 当たり2回、外れ3回(2015年小笠原慎之介、2016年柳裕也)
阪神 当たり2回、外れ6回(2013年岩貞祐太、2015年高山俊)

 セ・リーグでは、3連覇の広島が2013年に阪神、ヤクルトとの競合で今季最多勝投手・大瀬良大地を引き当てている。もし阪神かヤクルトが当たりくじを引いていたら、もしかしたらセの勢力地図は大きく変動していた可能性もあり、「くじ引き」の行方が、いかにチームの編成に大きな影響を与えているかがうかがえる。

 また、DeNAが2014年に今季セーブ王のクローザー・山崎康晃を阪神との競合で引き当てているのも大きい。この時は、4球団競合の有原航平(現日本ハム)を外した後の指名でまた競合し、DeNAが当たりくじを引いた。阪神は2013年に競合で引き当てた岩貞祐太がプロ5年で24勝、2015年の高山俊が新人王を獲得したが、伸び悩んでいる印象もある。くじでは過去5年で当たり2回、外れ6回と運がない。6年前の2012年には藤浪晋太郎を4球団競合の末引き当てているが、そろそろ当たりを引きたいところだ。

 巨人は当たりなしの5回外れと全くくじ運に恵まれていない。単独指名が続いたこともあるが、1位の重複指名で当たりを引いたのは、2008年にソフトバンクとの競合で大田泰示(現日本ハム)を引いて以来10年間ない。

明らかな“1本釣り”戦略の西武とオリックス、過去5年でくじ引き1回だけ

◯パ・リーグ

西武 当たり0回、外れ1回
ソフトバンク 当たり2回、外れ5回(2015年高橋純平、2016田中正義)
日本ハム 当たり2回、外れ7回(2014年有原航平、2017年清宮幸太郎)
オリックス 当たり1回、外れ0回(2017年田嶋大樹)
ロッテ 当たり4回、外れ2回(2013年石川歩、2015年平沢大河、2016年佐々木千隼、2017年安田尚憲)
楽天 当たり2回、外れ3回(2013年松井裕樹、2014年安楽智大)

 5年間で日本ハムが計9回とくじ引きが多く、西武とオリックスが1回しか引いていない。日本ハムは「その年の一番いい選手を1位指名する」という方針があり、競合の多さやくじ引きを恐れない。「指名しなければ当たりも引けない」というチャレンジングな姿勢で、有原と清宮を引き当てている。

 2011年には、巨人の単独指名と思われた菅野智之を指名してくじで交渉権を引き当てたかと思えば、2012年の大谷翔平のように、指名拒否を打ち出しても敢然と単独指名。他球団に左右されない独自のドラフト戦略をとる。

 逆に、西武とオリックスは確実に単独指名で即戦力を獲りにいく“一本釣り”戦略を基本としている。ともに1回の抽選は昨年、田嶋大樹でこの2球団が競合してくじ引きになったもの。お互いに単独指名だと思ったら、たまたまかぶってしまった……という形か。パはドラフトで「わが道を行く」球団が多い印象だ。

 ロッテは12球団唯一、当たりが外れより多いが、当たり4回のうち佐々木千隼と安田尚憲は外れ1位で競合し当たりくじを引いた。4回中3回は2球団競合で、当選確率が低いくじを当てたのは、外れながら5球団が競合した佐々木だけ。勝負強いかと言われると微妙なところか。

 今年は根尾昂に多数の球団の指名が集中すると予想されており、藤原恭大、人気者の吉田輝星も複数球団の重複指名の可能性がある。大学生では甲斐野央、上茶谷大河、梅津晃大や、松本航らの即戦力投手に人気が集まりそうだ。何球団が抽選に臨み、どこが当たりくじを引くのだろうか。まさに運命の1日となる。(Full-Count編集部)

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