F1 Topic:メルセデスがアメリカGPで失速する原因となった“いくつかの理想的ではない問題”

 F1第18戦アメリカGPでは、キミ・ライコネンの5年ぶりの勝利にパドックが沸いた。しかし、そんなパドックの様子と対照的に、メルセデスのチームスタッフたちの表情は曇っていた。

 もちろん、その理由は事前の予想を裏切り、ポールポジションからスタートしたルイス・ハミルトンが3位に終わり、チームメイトのバルテリ・ボッタスも5位に沈んだからだ。

 今回の敗因で、まず考えられるのは、なぜハミルトンを2回ストップにしたのか、だ。その理由をメルセデスのスポーティングディレクターを務めるロン・メドウは次のように説明する。

「当初は1ストップで行く予定だったが、スタートして間もなく、タイヤが持たないことが判明した。そのタイミングでバーチャルセーフティカー(VSC)が入ったので、(キミ・)ライコネンがステイアウトした場合はピットインしろと指示を出した」

 2ストップに切り替えたハミルトンは、1回多いピットストップのロスタイムを取り戻すために、タイヤ交換後プッシュした。すると今度はブリスターに悩まされることになる。じつはレース日になって、ピレリから最低内圧を1.5psi上げるようにという指示書がFIA経由で出されていた。

 これにより、「タイヤの接地面の形状が膨らんで丸みを帯び、結果的にタイヤ中央が異常発熱を起こしてブリスターが出てしまった」とメドウは分析している。

 ただし、ハミルトンは「最低内圧の変更は、それほど大きなファクターではなかった」と語り、こう続けた。

「僕らのクルマは、いくつかの理想的ではない問題によって、タイヤをうまく使えなかったんだ」

 そこでタイヤが上手く扱えなかった原因として浮上してきたのが、メルセデスが使用している新しい形状のホイールが、アメリカGPでは修正された仕様に変更されていたという情報だ。

 この新形状ホイールはOZ製で、第13戦ベルギーGPから使用され、スポークのホイール中心側には、さらに多くの開口部が設けられ、リムの外周付近には突起のようなものが存在する複雑な形状となっている。

 これによってメルセデスはブレーキの排熱を効果的に行い、その結果、タイヤがオーバーヒートしにくくなったと言われている。

■日曜日のメルセデスに発生したいくつかの問題

 しかし、フェラーリはそのホイールの合法性を疑問視し、アメリカGPのレース後に公式に抗議を提出する予定だった。そのことを察知したメルセデスは、タイトルが決定した際の混乱を避けるため、指摘されていた部分を改良したホイールを使用しなければならなかった。そのため、レースではオーバーヒートに悩まされ、ブリスターを起こしたのではないかと考えられている。

 ただし、アメリカGPの日曜日にメルセデスが使用していたホイールは、外周部分の形状は日本GPまで使用していたものと同様なので、変更が加えられていたとすれば、ホイール中心側のスポークに変更を加えたものと考えられる。

 またハミルトンが「いくつかの理想的ではない問題」と語っていることから、ホイール以外の問題を指摘する者もいる。

 その問題とは、メルセデスが日曜日に向けてウォーターポンプを交換していたことだ。予選後にバルテリ・ボッタスのウォーターポンプに問題が出ていることを発見したメルセデスは、大事をとってハミルトンのパーツも交換していたのだ。

 もちろん、同スペックなので、FIAの許可を得ており両者ペナルティは受けなかった。

 ただし、メルセデス側はなぜウォーターポンプに問題が起きたのかという原因を把握できていなかったため、エンジンを通常よりも抑えて使用していたのではないかと、ある情報筋は語る。

 そのためレースでは、ハミルトンがなかなかライコネンを抜けず、終盤はマックス・フェルスタッペン(レッドブル)も抜けなかったのではないか、とその情報筋は分析している。

 果たして、真実は何か。そして、メルセデスはメキシコGPで復活するのか、それとも再び失速するのか。メキシコGPではタイトル争いだけでなく、メルセデスのパフォーマンスにも注目だ。

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