恩返し胸に「顔になる」 大舞台へ満面の笑み 万波中正(横浜高)、日本ハム4位

 プロ野球の新人選手選択会議(ドラフト会議)が25日、東京都内のホテルで開かれた。

 名門のスラッガーに、満面の笑みが広がった。日本ハムに4位指名された横浜高の万波中正は、「ほっとしている。ようやくスタートラインに立てたかな」と胸をなで下ろした。

 1年夏と3年夏、横浜スタジアムのスコアボードに白球をぶち当てるほどの規格外のパワーを持つ。100回目の甲子園では金足農高の吉田輝星から2安打を放った。その吉田とはチームメートになるが「仲良くやれたらいい」とはにかんだ。

 今年に入って打撃不振から退寮を命じられ、今春はスタメン落ち。コンゴ人の父・ルシクさんが病に倒れるなど逆境が続いた。

 自信を失い、最後の夏が迫ったある日のこと。万波は母・有里子さんに思わず弱音を吐いたという。「一応、プロ志望届は出したいけど、駄目かもしれないよね」。母はきっぱりとこう言った。「まだ18歳だし、可能性に満ちているのに、諦めるのは早すぎない?」

 はっとした。「『プロ目指すなら本気でやれ』と。自分は何を弱気になってるんだと、あの一言で感じさせられた」。以来、誰よりも早くグラウンドに顔を出し、夜は遅くまでバットを振った。

 この日、会見場に駆け付けた母に、真っ先にサインボールをプレゼントした。「球団の顔になれるよう頑張りたい」。北の大地で、恩返しが始まる。 

 ◆まんなみ・ちゅうせい 外野手。東京・開進二中(東練馬シニア)-横浜高。190センチ、90キロ。右投げ右打ち。18歳。

日ハム4位指名が決まりチームメートから胴上げされる万波=横浜高

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