金属行人(10月26日付)

 今月、タイのバンコクで日本の鉄鋼・鋼構造技術に関するセミナーがあった。100人を超えるタイの関係者が、日本の専門家のプレゼンテーションに耳を傾けた▼タイの関係者の間で最近、関心が高まっているのが鉄骨橋梁。タイは地震の少ない国として知られるが、最近は震度1~4クラスの地震がたびたび発生している。ほとんどがコンクリート製というタイの橋は大丈夫なのか。そんな不安が鉄製の橋梁への熱い視線につながっている▼首都バンコクでは交通渋滞が深刻だ。その解消策の一つとして当局が検討しているのが交差点の立体化。ここでは鉄製の道路橋の出番となる。雨の多いバンコクでは、日本の鉄鋼メーカーが開発した耐候性鋼が最適と、さびにくい鉄を使う有用性を日本の専門家がセミナーで説明したという▼このセミナーは新興国を対象とする経済産業省の協力事業の一環。鉄骨橋梁などハード面の技術協力にとどまらず、規格化や人材育成などソフト面の協力もメニューに入っている。12月にはタイの政府関係者が日本で研修を受ける予定だ▼日本の技術・システムの移管によって新興国の経済成長を支援する事業だが、鉄を主軸としたプログラムは、安全・安心を運ぶ協力でもある。

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