元F1ドライバーのブーツェン、同郷のバンドーンが力を示せなかったことを悔やむ

 ベルギー出身の元F1ドライバー、ティエリー・ブーツェンは、同郷のストフェル・バンドーンがF1シートを失うことを残念に思う一方、彼はグリッドに残れるほどのパフォーマンスを発揮できていなかったのだと考えている。

 バンドーンは、モータースポーツのジュニアカテゴリーにおいて能力を示しており、特に2015年のGP2シリーズでタイトルを獲得したことが、F1での輝かしい未来を示唆していると見られていた。

 2017年にマクラーレンF1のレギュラードライバーに昇格し、活躍が大いに期待されたバンドーンだったが、チームは技術的な問題や戦略のつたなさにより混迷そており、シーズン当初から苦戦を強いられた。

 とはいえブーツェンから見れば、バンドーンの走りは、特にチームメイトのフェルナンド・アロンソと比べて期待されたレベルには達していなかったようだ。

「とても単純な話だ。ストフェルは2年間にわたりF1で走るチャンス得ていたが、さまざまな理由のために、そこで自分に何ができるのかを示せなかった」と、ブーツェンはベルギーの放送局RTBFに対して語った。

「彼は自分が少なくともチームメイトと同じくらい速い男なのだということを実証すべきだった。だが、毎回フェルナンド・アロンソの方が軽くコンマ5秒は先行していた」

「いくつかの要因が説明できるだろう。だが、ドライビングの問題なのか技術的なことなのかは関係ない。ストフェルには自分の力を示すチャンスが2シーズンあったにもかかわらず、上手くやることができなかったのだ」

 163戦のグランプリレースを走ったベテランのブーツェンは、F1というスポーツが、目的達成のためにはどんなこともするということを嫌というほど分かっている。

「ストフェルはあの場で戦う才能を持っているだけに残念だが、F1とはそういう場所なのだ。ドライバーはいわばティッシュペーパーのようなものだよ。良いときには使われるが、使えなくなったとたんにお払い箱になる」

 現在61歳のブーツェンは、レース引退後にモナコで航空事業を立ち上げて大成功を収め、現在も経営側の立場にある。そのブーツェンからは、バンドーン自身の物事の考え方がある時点で大きな打撃を受け、そのために自信が揺らいでしまったように見えている。

「期待通りに物事が進まなくなったときから、自分に対して疑問を持ち、くよくよと悩むようになってしまう」とブーツェンは説明する。

「だが私は、ストフェルは転向先のフォーミュラEで勝ち始めれば精神的に強くなるだろうし、そうすればF1に戻ってくることも可能だろうと考えている」

「一度F1に来た男に二度目がないと思うかい? 今後は彼次第だよ」とブーツェンは付け加えた。

 バンドーンは2018年末に開幕するフォーミュラEの第5シーズンに、メルセデスと提携するHWAレースラボから参戦し、自身のキャリアにおける新たな一歩を踏み出すことが決まっている。

 また、バンドーンはメルセデスF1チームの拠点であるブラックリーでシミュレーター作業を担う可能性もある。そうなれば、彼はF1との接点を保ち続けることができるだろう。

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