東京パラ、暑さ対策は五輪とも連携へ IPCのゴンザレスCEO 難民選手団拡大

インタビューに応じるIPCのハビエル・ゴンザレスCEO

 国際パラリンピック委員会(IPC)のハビエル・ゴンザレス最高経営責任者(CEO)が共同通信のインタビューに応じ、2020年東京大会に向けた暑さ対策で国際オリンピック委員会(IOC)とも連携して分析を進める考えを示した。車いす選手の輸送や宿泊施設のバリアフリー化でも改めて課題を指摘した。

(聞き手は共同通信運動部次長・田村崇仁)

 ―全22競技の日程の大枠が決まり、マラソンなど屋外競技は暑さに配慮した時間設定となった。

 「多角的に情報を集め、ベストの選択ができたと思う。大会組織委員会と暑さだけでなく、台風も含めた天候対策を推進する作業部会の設置も決めた。五輪とも共通する会場や多くの課題があり、IOCの作業部会とも情報共有して解決策を探る戦略だ。車いす選手は路面からの照り返しを強く受け、体温調整も難しい場合もあるが、IPCは高温多湿の中東ドーハで世界大会を開いた経験がある」

 ―政府が客室総数50室以上のホテルなどを新増築する場合、車いす利用者用の客室の割合を1%以上とするよう義務付ける改正バリアフリー法施行令を閣議決定した。

 「東京はバリアフリー対応のホテル不足が課題だ。法改正の進展には満足している。1800人の選手が車いす使用者であり、選手村と競技場を行ったり来たりするだけでなく、車いすを利用する観客もいる。車いすに対応したバスの確保やホテルのアクセシビリティー(利用しやすさ)は大会のレガシーにもつながる」

 ―バリアフリー化のモデルとなる国はどこか。

 「法律的な面では米国。英国もパラリンピックを契機に大きな進展があった。カナダやオーストラリア、スペインもそうだが、重要なのは法的な側面だけでなく、人々のメンタリティーが大切。共生社会の実現で、ロンドンでは障害者の雇用が急拡大した例もある」

 ―国ぐるみのドーピング問題で、9月に世界反ドーピング機関(WADA)がロシアの反ドーピング機関(RUSADA)の資格停止処分を条件付きで解除した。

 「ロシアの国内パラリンピック委員会(RPC)への資格停止問題は来年早々にも結論を出したい。ただ国主導を指摘したマクラーレン報告書に関連した背景があり、いくつか条件が必要。資格回復の可否はIPCの作業部会が出す評価にかかっている。条件の一つとしてロシア選手の検査にかかった費用負担をRPCには求めたが、まだ全額支払いは完了していない」

 ―16年リオデジャネイロ大会では難民選手団で2選手が出場した。東京大会の状況はどうか。

 「IPCは難民支援活動を継続しており、来年1月にも理事会で提案される。組織編成と後方支援が必要だが、さらに拡大した形になるだろう」

 ―若者の選手育成や普及を目的にした国際総合大会「ユース・パラリンピック」の創設に向けても今秋から協議に入った。

 「9月にマドリードでユース戦略の本格的な検討を始めた。現在は欧州やアジアなど各大陸別のユース大会を分析し、精査している段階だ。草の根レベルから、パラ選手の参加を増やす必要もある。ただ国際大会を組織するのは簡単ではない」

 ―話題のコンピューターゲームで勝敗を競う「eスポーツ」の参入は。

 「IPC内部でも議論は始めたが、まだ初期段階だ。具体的な計画はない。立場を表明するのは時期尚早で詳細に見ていかないといけない」

 ハビエル・ゴンザレス氏(スペイン) 2002年に国際パラリンピック委員会(IPC)入りし、04年から最高経営責任者(CEO)。1992年バルセロナ、96年アトランタ、00年シドニー大会などの各組織委員会に携わった経験を持つ。バルセロナの大学で経済、社会学を専攻。59歳。

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