F1の開発はとどまるところをしらず、毎グランプリ、新しいパーツが導入されている。F1iのテクニカルエキスパート、ニコラス・カーペンティアーズが、マシン開発におけるフェラーリとハースの関係について解説する。
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ハースVF18とフェラーリSF71Hは、いわばいとこ同士のような関係である。ハースはFIA技術規約の許す最大限の範囲で、フェラーリから車体パーツを購入しているからだ。
VF18の開発はイタリアで行われている。レッドブル、フェラーリでキャリアを積んだ空力部門責任者のベン・アガサンジェルーがマラネロの風洞で空力を開発し、製作されたパーツはパルマにあるダラーラのファクトリーで組み立てられる。その後英国バンバリーにある旧マルシャのファクトリーに送られ、パッケージとして完成する。
スポーツ規約附記その6によれば、F1チームはモノコック、サバイバルセル、ノーズやマシンリヤといったクラッシャブルストラクチャー、ウイング、フロアなどを自社製作しなければならない。言い換えればそれらを自前で作らなければ、F1チームとして認定されないということだ。
ハースの場合はダラーラがそれらの製作を請け負っているが、製作に従事する80名の従業員はハースと契約し、チーフデザイナー、ロブ・テイラーの指揮下に入っている。
そんな複雑に入り組んだハースの車体製作の中で、唯一100%アメリカ製といえるのがCFD(デジタル流体解析)である。ノースカロナイナ州カナポリスにあるNASCARのスチュワート・ハースレーシングのファクトリーに、その設備は置かれている。
CFDは風洞実験と並んで、F1マシンの空力開発に欠くことのできないツールである。それがハースの場合は、風洞はイタリア、CFDはアメリカと海を隔てたふたつの場所で別々に行われているのだ。
「それは決して、理想的なことではない」と、CFD開発責任者のチャールズ・ジェンクスは語っている。
「空力エンジニアたちがすぐ傍らにいて、必要な時に言葉をかわせば開発はいっそうスムーズに進むと、いつも感じているからね。しかしもともとCFDはF1参戦以前からアメリカベースで行われていたし、CFDは現在オートマ化を極力進めている。今後は空力開発にかかわる多くの作業は、イタリア側に集約されることになるだろう」
CFDに関しては、アメリカの大学とも連携しているという。しかしマシン開発、製作の経緯を見る限り、ハースVF18はアメリカよりもヨーロッパにより多くのルーツを持っていると言うべきだろう。