『ビブリア古書堂の事件手帖』 フェティッシュなまでの「手」へのこだわり

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 原作は、2012年本屋大賞に文庫では初めてノミネートされ、フジテレビの「月9」枠でドラマ化もされた人気シリーズ。それを黒木華×野村周平のW主演で映画化。特に、本のこととなると並外れた情熱と知識を持つものの極度の人見知りという、“キャラクター文芸”ブームの火付け役となったヒロイン・栞子を演じる黒木はハマり役だ。

 原作シリーズの第1巻、夏目漱石の『それから』と太宰治の『晩年』のエピソードを軸に、鎌倉で古書店を営む栞子が、子供の頃のトラウマから活字恐怖症で本が読めない大輔をワトソン役に、本にまつわる事件を解き明かす。とはいえ、この映画の魅力は、謎解きではない。

 監督は、前作『幼な子われらに生まれ』で株を上げた三島有紀子。アプローチが着実に映画的になってきている印象はあったが、特に今回の“手”への執着はどうだろう! 手から手へと本を手渡す行為には“想い”を託すという意味がありそうだが、それにしてもフェティッシュなまでの手に対するこだわりは、ブレッソンへのオマージュ?

 あくまでも仮説だが、本作を「手の映画」にしている最大の貢献者は、東出昌大。彼がタバコを手放さないのは、小説家志望の役だからではなく、観客の視線を彼のセクシーな手に向けるためではなかろうか。三島監督は撮影しながらきっと、東出の手に恋していたのだと思う。★★★★★(外山真也)

監督:三島有紀子

原作:三上延

出演:黒木華、野村周平

11月1日(木)から全国公開

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