32年前は「工藤投手」のサヨナラ打が転機に ホークス、地元で「普段通りに」

ソフトバンク・工藤監督と広島・緒方監督【写真:藤浦一都、荒川祐史】

CSから積極采配を見せる工藤監督、日本Sの初戦引き分けに不思議な縁

 よもやの初戦引き分けから始まった「SMBC日本シリーズ2018」。ソフトバンクは1敗1分で帰福することになった。それでも工藤公康監督は「日本シリーズは4つ勝った方が日本一。そのためにどうするべきか(首脳陣の)みんなで考えていく」と前を向いた。

 先頃の「パーソルCS パ」同様にベンチの積極采配が随所に見られた。

 第1戦は初回に2点を先行されたが、5回に2死二、三塁のチャンスで打順が先発ピッチャーの千賀滉大投手に回ってくる。立ち直った後は完璧な投球を見せていたが、工藤監督は迷わず代打にアルフレド・デスパイネ外野手を送った。

 これが的中。二塁適時内野安打となり、さらに相手失策も絡んで2-2と追いつく。その後は豊富なリリーフ陣を惜しみなく注ぎ込んだ。武田翔太投手と石川柊太投手に加えて、加治屋蓮投手も2回を投げていずれも無失点に抑えた。

 延長戦に突入して11回表の福岡ソフトバンクは2死満塁の絶好機を作るも、得点ならず。12回表も2死一、二塁としたが決定打が出なかった。

 日本シリーズ初戦の引き分けは史上3度目で、1986年以来32年ぶりだった。当時の対戦カードが「広島×西武」。今シリーズ前に工藤監督が「広島とやるシリーズはもつれる」と語っていたが、その予言通りの結果となった。

 ちなみにこの時は第2戦から広島が3連勝して一気に王手をかけたが、第5戦で西武が意地を見せて初勝利を挙げた。それが“工藤投手”のサヨナラ打だった。勢いを取り戻した獅子は敵地でも連戦連勝。史上唯一の第8戦まで勝ち続けて4勝3敗1分けで日本一に輝いたのだった。工藤投手は投げても1勝1敗2セーブのフル回転の活躍で、胴上げ投手になり、見事MVPも獲得した。

 当然のようにその話題を振られた指揮官だが、「僕の時のことは関係ないと思っていますよ」と少し照れながら煙に巻いた。

第3戦からは地元の大声援を味方に

 ただ、第2戦を勝ったのは、その昔と同様に広島だった。リック・バンデンハーク投手が5回5失点と打ち込まれた。

 試合前、広島の打撃練習。バッティング投手が手作りの木製マウンドから投げていた。彼らは普段、平らなところから投げる。広島の選手に聞くと「以前いた石井(琢朗)コーチの発案で導入したもので、背の高い投手と対戦する試合前の練習では使用している」とのこと。この準備力が広島を強くしたのだと改めて思い知らされた。

 1-5の完敗。前日に死球を受けた内川聖一内野手の欠場も痛かった。工藤監督は「ウチの打線も決して悪くなかったが、相手が上回った」と唇をかんだ。また、デスパイネを左翼に起用するなど攻撃的布陣で臨んだが、守りでは不運な打球も多かった。

 それでも工藤監督は「大竹くんがクライマックスに比べればよくなっているし、グラシアルもいい当たりが正面を突いているだけで悪くない。柳田くんにも(安打が)1本出た。落ち着いてくる。次から楽しみ」と敗戦の中にも収穫があったことを口にした。シーズン終盤に故障した今宮健太内野手が復帰したのも大きい。

 第3戦からは地元ヤフオクドームに戻っての戦いとなる。指名打者制があり、なによりホークスファンの大声援を味方につけて戦うことができる。キャプテンの内川は「声援が力になるというのは選手ならば誰もが知っていること」と話す。

「普段通りの戦いができると思います」と工藤監督。日本シリーズ第3戦の先発はミランダだ。「パーソルCS パ」では不振だったが、パ・リーグでは初対戦のチームはどこも苦戦していた。カープ打線を翻弄できるか、注目だ。(「パ・リーグ インサイト」田尻耕太郎)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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