日韓で「朝鮮通信使」図録 「世界の記憶」登録1周年

 朝鮮王朝が日本に派遣した外交使節「朝鮮通信使」の関連資料(日韓の計111件333点)が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)「世界の記憶」に登録されて31日で1周年。共同申請した日韓の民間団体が来年の登録2周年に向け、それぞれの国の登録資料を一つの図録にまとめる「合本(がっぽん)」準備を進めている。千部作り、一部を両国の図書館などに寄贈する。
 図録は各資料を撮影した画像に解説文を付け、日韓ともに同サイズ(218ミリ×304ミリ)で作る。韓国側は、現存する通信使行列図で最古とされる1624年の「仁祖2年通信使行列圖(ず)」(韓国国立中央図書館蔵)など63件124点を掲載。日本側は1607年の「朝鮮国書」(京都大総合博物館蔵)など48件209点を紹介する。両国の図録を同じケースに収める。
 すでに韓国語版を完成させた「釜山文化財団」(釜山市、柳鐘穆(ユジョンモク)代表理事)は「登録の過程も日韓で協力してきた。日本語版も作り、ともに記録を残していきたい」。今後、日韓両訳版を製作する「朝鮮通信使縁地連絡協議会」(事務局・長崎県対馬市)の松原一征(かずゆき)理事長は「現代版の友好の証しとして両国で作りあげ、平和の歴史を後世に伝えていきたい」としている。
 通信使は、朝鮮国王が徳川将軍家に派遣した使節団。豊臣秀吉の朝鮮出兵で断絶した日朝関係を対馬藩が橋渡し役となって1607年から1811年まで12回往来し、友好と文化交流に貢献した。

釜山文化財団が制作した図録を手にする朝鮮通信使縁地連絡協議会の松原理事長=対馬市厳原町

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