絶好調の最新ボルボ、実はバリュー・フォー・マネーにも優れていた ~その魅力、デザイン性や最先端の安全性能だけにあらず~

ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

クルマ選びのお買い得度は様々な要素をチェックする必要がある

商品やサービスの価値は、機能などの内容と価格のバランスで決まる。クルマであれば、居住空間の快適性や荷室の使い勝手、内外装のデザインや質感、走行性能、乗り心地といった様々な要素に対し、価格がどのような設定になるかで買い得度が判断される。

そして人気カテゴリーの場合、国内外の複数メーカーから多彩なライバル車種が用意されており、クルマの価値は相対評価で決まっていく。現時点で買い得だと判断されても、翌年にライバル車が一斉に新型になって商品力を大幅に高めたら、機能に対して価格の割高なクルマになることもあり得るから、その評価も常に変化していく。装備面で言えば、緊急自動ブレーキに代表される先進安全機能が急速に進歩している点も見逃せない。

こうした相対評価のいっぽうで、内外装のデザインや質感、乗り心地は乗員の好みに影響される面も大きく、実際にクルマを見たり運転してみないと最終的な判断がしづらい。

このようにクルマのお買い得度を判断するには、車両と併せて装備内容も細かくチェックする必要がある。

ただ安全だから凄いのではない、安全を等しく全てのボルボ車に提供するから凄いのだ

ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)
ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

中でも最近、ユーザーの関心が集まる先進安全装備や運転支援機能に注目してみよう。

「安全」といえばボルボの名は真っ先にあがるが、ここへ来てボルボでは買い得度までも強めてきたのだから凄い。安全装備ではグレード間に格差を設けず、常に最先端の安全性が得られるよう配慮している。

例えば人気コンパクトSUV「ボルボ XC40」で実例を挙げてみよう。

価格が最も安いベーシックグレード、389万円(消費税込、以下同)の「T4」にも、16種類以上の先進安全装備や運転支援機能がフルに装着される。

“City Safety”(シティセーフティ:衝突回避・軽減フルオートブレーキシステム)は、対車両だけでなく歩行者、自転車、大型の動物も検知して緊急自動ブレーキを作動させ、さらに夜間走行にも対応した。対向車線からハミ出してきた車両とのブレーキによる衝突回避を支援する対向車対応機能(2018年9月から国内導入開始の新型V60より採用された新機能で、XC40でも2019年モデルから対応してきた)、ステアリング操作まで支援して、対向車との衝突回避を助ける“オンカミング・レーン・ミティゲーション”、自車が右折しようとしている時に直進する対向車との衝突を避ける“インターセクション・サポート”など、コンパクトなXC40にも、V60など上位モデルと同等の先進安全装備を標準採用している。

運転支援の機能としては、先行車との車間距離を自動調節しながら追従走行する全車速追従型ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)、車線の中央を走れるようにパワーステアリングを制御するパイロットアシストなどが備わり、ドライバーの疲労を軽減する。ドライバーの運転をサポートすることで、さらに安全性も高まるというわけだ。

「City Safety」(衝突回避・軽減フルオートブレーキシステム)機能紹介【VOLVO公式動画】

ボルボ XC40おススメのグレードは!?

ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

このように列記してきた数々の高機能がベーシックな「T4」にも標準装備される点は非常に魅力的だが、同グレードはHDDナビゲーションシステムや12セグ地デジTVなどが備わらない(9インチのタッチスクリーン式センターディスプレイやボイスコントロール、FM/AMラジオ等は備わり、Apple CarplayやAndroid Autoには対応する)。スマホの地図アプリを主に用いるのならT4もアリだが、一般的にはカーナビなどの快適装備が標準装着され、内外装のデザイン性や質感も高まるXC40 T4 モメンタム/T4 AWD モメンタムが推奨される。価格は439万円(FF)/459万円(4WD)だ。4WDは価格差を20万円と少額に抑えており、筆者はこのXC40 T4 AWD モメンタムをイチ押しとしたい。

T4に搭載されるエンジンは直列4気筒 2リッター ガソリン直噴ターボで、最高出力は190馬力(4700回転)、最大トルクは30.6kg-m(1400~4000回転)と余裕がある。モメンタムグレードは、内装の質が高いことも注目される。

ボルボ XC40とライバルのドイツ製コンパクトSUV、バリュー・フォー・マネー度を徹底比較

それならば、ボルボの買い得度をライバル車と比べたらどうなるか。新世代のボルボ車はいずれも内装の質、シートの座り心地、走行安定性、乗り心地などを大幅に向上させている。ここではドイツのプレミアムブランドを代表して、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディの各コンパクトSUVと徹底比較したい。

メルセデス・ベンツ GLA 特別仕様車「オフロードエディション」を発売

まずはメルセデス・ベンツだが、XC40のライバル車はコンパクトSUVの「GLA」だ。

XC40のT4 AWD モメンタムに近いグレードは、直列4気筒2リッターターボを搭載する4WDグレード、GLA220 4マチックになる。価格は458万円だから、XC40 T4 AWD モメンタムとほぼ同額だが、GLA220 4マチックはブラインドスポットアシストなどをセットにしたレーダーセーフティパッケージを20万1000円のオプションにしている。

そもそもGLAには、“インターセクション・サポート”や、高度な操舵支援を行う“パイロットアシスト”などに類した、いわゆる自動運転(レベル2)に相当する先進機能は装着されないため、安全面において特にXC40との差が大きい。

このほか運転席の電動調節機能もセットオプションに含まれ、カーナビは17~20万円のディーラーオプションだ。こうなるとXC40は、非常に先進的で高機能な割に価格を随分と抑えたと判断される。

BMW X1 xDrive18d URBANISTA(アーバニスタ)/西日本地区限定の特別限定車

BMWでは「X1」がライバル車だ。

比較対象となるグレードは、直列4気筒2リッターターボエンジンと4WDを組み合わせるX1 xドライブ 20iスタンダードになる。価格は458万円だから、メルセデス・ベンツ GLA220 4マチックと同額だ。このカテゴリーは人気が高いためにライバル争いも激しく、買い得グレードが狭い価格帯に集中している。

X1 xドライブ 20iスタンダードの装備を見ると、車間距離を自動調節できるクルーズコントロールなどのセットオプションが15万5000円、運転席の電動機能は12万8000円のセットオプションになる。装備だけ見てもXC40 T4 AWD モメンタムは28万円ほど割安だ。

加えて、先に述べたXC40に相当する先進安全&快適装備はそもそも用意されないため、買い得度ではさらに差が開く。

アウディ Q3 Sライン コンペティション

アウディでは「Q3」がライバル車になる。

XC40 T4 AWD モメンタムと同様の性能を備えた4WDグレードは、直列4気筒 2リッターターボのQ3 2.0 TFSI クワトロだ。価格は469万円だから、XC40に比べて10万円高い。こちらはわずか10万円の差だが、装備面で見てみると、カーナビが24万円のオプションで、安全装備も異なる。Q3は車線逸脱を防ぐ機能を17万円のオプションとして用意したが、それ以上の装備はない。こうして比較してみると、XC40は少なくとも50万円以上は割安だし、それ以上に圧倒的な先進性も備える。

以上のようにボルボ XC40 T4 AWD モメンタムは、一見すると価格こそメルセデス・ベンツ GLA220 4マチック、BMW X1 xドライブ 20iスタンダード、アウディ Q3 2.0 TFSI クワトロとほぼ同程度だが、まず快適装備の水準が大幅に上まわる。そのうえでXC40は、XC60などの上級車種と同等の先進安全装備を標準採用しており、GLAやX1では得られない機能も多く含まれるから、ますます買い得度が強まるわけだ。

加えて内外装の質、少し機敏に反応するスポーティな運転感覚なども魅力だから、XC40の買い得度はドイツのプレミアムブランドよりも強いと言って良いだろう。

ボルボ 新型V60 T5 Inscription[FF/ボディカラー:バーチライトメタリック]

Lクラス並みの居住性、上質かつモダンな室内・・・魅力溢れるボルボ 新型V60

ボルボ 新型V60 T5 Inscription[FF]
ボルボ 新型V60 T5 Inscription[FF]

次は、2018年9月にフルモデルチェンジを果たしたボルボのステーションワゴン、新型「V60」を取り上げたい。

プラットフォームは、2017-2018 日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、国内外から高い評価を集めるSUVモデルの「XC60」と基本的に共通で、前輪駆動車ベースながらもボンネットが長く、全長が4760mm、全幅は1850mmのボディは、伸びやかで美しい。

内装は上質かつモダンな印象で、ドリフトウッドパネル(流木をイメージした独特の風合いを持たせた木目)を用意するなど個性も強い。居住空間にはLサイズワゴン並みの広さがあり、後席の足元空間もタップリしている。大人4名が乗車して、長距離を快適に移動できる。

全車が直列4気筒 2リッターガソリンエンジンを搭載して、T5はターボ、T6とT8はターボとスーパーチャージャーを併用するプラグインハイブリッドと、凝ったメカニズムを採用した。

非常に充実した先進安全装備はXC40と同様で世界最先端をいく。価格はV60 T5 モメンタム[FF]が499万円だ。カーナビなども標準装着され、全長が4700mmを超える輸入車としては価格を割安に抑えた。

ボルボ 新型V60とライバルのドイツ製ステーションワゴン、バリュー・フォー・マネー度を徹底比較

メルセデス・ベンツ 新型Cクラス

V60のライバル車としては、まず「メルセデス・ベンツ Cクラス ステーションワゴン」が挙げられる。

2018年7月のマイナーチェンジで小排気量のガソリンターボがラインナップの中心となった。1.5リッターガソリンターボのC200ステーションワゴン アバンギャルドで価格は576万円だ。

装備については、緊急自動ブレーキを作動させるアクティブブレーキアシストは標準装着されるが、上級のレーダーセーフティパッケージは20万1000円でオプション設定になる。Cクラスステーションワゴンは、ボルボ V60に比べると装備面で約100万円は高い印象だ。機能的にも後席の足元空間などはV60が少し広く、こうした実用性の高さもV60の魅力になる。

3シリーズ エディションシャドウ

BMWでは「3シリーズツーリング」がライバル車だ。

V60 T5 モメンタムに相当するグレードは、直列4気筒2リッターガソリンターボを搭載する320iツーリング スポーツで、価格は582万円になる。先進安全装備では、ACCやレーン・チェンジ・ウォーニング、衝突回避・被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)等の装備があるとはいうものの、自動ブレーキの夜間作動の有無などはカタログにも明記されておらず、パイロットアシスト(レベル2相当の自動運転)のような機能も設定がない。もはや性能・機能の面で全て最新のV60が圧倒する。

ちなみに現行BMW 3シリーズの発売は2012年だから、すでに6年を経過した。先進安全装備は近年になって急速に進化したから、基本設計が古いと性能面では断然不利になる。BMW 3シリーズは後輪駆動のスポーティな運転感覚を特徴とするが、機能や装備と価格のバランスから客観的に判断すれば、V60が割安だし、そもそもの安全性もv60のほうがグッと高い。V60とBMW 3シリーズを比べるとすれば、後者が次期型にフルモデルチェンジしてからだろう。

アウディ A4

前輪駆動車のワゴンとしては「アウディ A4アバント」がライバル車になる。

V60 T5 モメンタムに相当するA4アバントのグレードは、直列4気筒2リッターターボを搭載する前輪駆動のA4アバント 2.0TFSI スポーツだ。価格は556万円になる。

安全装備は相応に充実するが、後方からの衝撃に備えるアウディプレセンスリアはやはりオプションだ。これを含んだアシスタンスパッケージの価格は22万円のプラスになる。そうなればV60 T5 モメンタムに比べて80万円ほど高い計算となる。さらにV60では標準装備のLEDヘッドライト(標準はバイキセノンヘッドライト)がオプション設定だ。LEDヘッドランプにウッドパネルやレザー内装などをセットにしたパッケージオプションもあるが、こちらもプラス39万円。V60ならば、最初から上質なファインナッパレザー(A4アバントの革シートより数段上質で柔らかな仕立てのうえ、マッサージ機能やベンチレーション機能まで備わる)や個性的なドリフト・ウッド・パネルも備わる上級グレードのT5 Inscription(599万円)が手に入ってしまう。

以上のようにドイツのプレミアムブランドに用意されるワゴンは、同サイズのV60よりも80~100万円高い。V60は世界トップクラスの先進安全装備を採用した上で、価格を割安に抑えた。

輸入車の上級ブランドは、概して価格の割安感が軽視されやすい。しかし商品である以上は、自分の好みにどの程度合っているかも価格に置き換えて、買い得度を判断したい。XC40やV60など設計の新しいボルボは、高い機能、洗練されたデザイン、そして最先端の先進装備・機能を採用した上で、攻めた価格設定にも魅力がある。このポイントは見逃してはいけない。

(手前右)ボルボ XC40 T4 AWD インスクリプション(4WD)/(奥)ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

“攻め”のボルボはクルマの新しい買い方・乗り方も提案する

クルマの新しい買い方・乗り方を提案している点も昨今のボルボの特長だ。特に近年話題を呼ぶ「スマボ」が注目される。

スマボは「スマートにボルボに乗る」という意味で、新車登録から3年間の自動車税、諸費用、メンテナンス費用などを組み込んだカーリースの仕組みである。購入して3年後には、車検費用程度の負担で新車のボルボ車に乗り替えることも可能だ。

注目!「ブリッジスマボ」ってどんな買い方!?

ボルボ XC40 T4 モメンタム(FF)

中でもユニークなプランでは「ブリッジスマボ」にも注目したい。

最新のXC40やXC60などは非常に人気があり納期も長いため、納車を待つ間の繋ぎ(ブリッジ)として、他のボルボを楽しめるようにした。

リース料金は1か月当たり車両本体価格の1.0%だ。例えば「ボルボ V40 T3 モメンタム」を借りるのであれば、車両本体価格が384万円だから、1か月当たりのリース料金は3万8400円になる。頭金の24万2438円は別途必要だが、月々の支払い額は安い。

先進安全装備に関心を寄せるユーザーは、最新のボルボ車をドイツ車と改めて乗り比べてみると良いだろう。ボルボのイメージが変わると思う。最新モデルは、これまでボルボが長年に渡り培ってきた安心と安全のクルマ造りに、北欧生まれらしい上質感やアクティブな雰囲気を加えた。その割に価格が安いので、強豪プレミアムブランドを相手にしても、十分な競争力を発揮できる。

[筆者:渡辺陽一郎/撮影:佐藤 正勝・島村 栄二・小林 岳夫]

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