日本で生きづらい子どもをなくす 明治学院大が支援教室提供

 明治学院大学で、難民ら外国にルーツがある子どもたちを対象にした学習支援教室が長期休暇中に行われている。今年の夏休みも20日間にわたり実施。子どもたちの学習意欲の向上のほか、安心できる居場所としての貴重な役割を担っている。

 「僕は漁法の種類について調べました。巻き網漁という方法があります」「それでは、日本の漁獲量についてクイズです」

 8月下旬、同大白金キャンパス(東京)。小学生5人が机を並べ、社会科の学習に励んでいた。米作りや九州の地理など、各自が調べてきたことを発表する授業。子どもたちは少し照れくさそうに、メモで一杯になったノートに目を落としつつ調査の成果を披露した。

 「漁獲量?」「日本で一番取れるっていう意味だよ」。分かりやすく言い換えるのは同大の学生ボランティア。この日は二人が子どもたちの隣に座り、共に授業を受けた。

 支援教室には、小学3年から高校3年までの45人が参加。ミャンマーやシリア、アフガニスタン、コンゴ、ベトナムなどルーツは多様。日本生まれの子、来日したばかりの子。滞日歴もさまざまだ。

 日本での生活に困難を覚える難民や定住外国人の自立を支援する社会福祉法人さぽうと21(東京)が運営を担う。週に1度、子どもから大人までの外国人らに学習ボランティアを提供しているが、日本語力の問題で「学校の授業についていけない子どもも少なくない」とコーディネーターの矢崎理恵さんは言う。子どもたちが安定した学習習慣を身に付けるため、集中的に学べる環境の必要性を長年感じてきた。

 そこで、法人の活動を見学するなどすでに連携関係にあった同大に大学の教室を使用できないか提案し、大学側は快諾。子どもたちの交通費などの資金面は外部財団が助成する形で、2年前に長期休暇中の集中学習が実現した。以来、夏休みと春休みに継続して実施している。

 日本語教師になって40年近くになる矢崎さんは「特に難民の子どもたちが抱える困難は見えづらい」と話す。「なぜ自分が日本で暮らしているのか」という事情をのみ込むのが難しい状況の中、日本語の壁に直面し、将来を考える上で助言をくれる存在が身近にいないことから進学先の選択肢が狭まる、といったいくつものハンディを抱えやすい。「学校では名前がカタカナだったり肌の色が違ったりすることでいじめを受けてしまうケースもある」と、矢崎さんは説明する。

 支援教室は、子どもたちが持つ多様な背景を十分理解している講師や学生ボランティアによる親身なサポートで子どもたちの緊張を和らげる。日本で苦労した体験を同学年の子たちと共有できることも、子どもたちの安心につながっているという。

 「学生たちにとっても、日本の多文化の状況を実践的に学べる貴重な機会になっている」と話すのは同大の野沢慎司副学長。学生ボランティアを務めた社会福祉学科4年の広瀬正太さんも「日常会話と勉強の日本語では理解に差があり、学校の授業についていくのは大変だろうな、と肌で感じた。外国にルーツのある子どもたちの生きづらさについてこれからも考えていきたい」と語る。

 矢崎さんは「高校に進むと支援がより薄くなる。子どもたちがこの先も日本社会で安定した暮らしが送れるよう、彼ら彼女らの困難に目を向け、必要なサポートのあり方について考えてほしい」と話している。

夏休み中に開かれた学習支援教室=明治学院大白金キャンパス

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