パリを拠点に活躍し、日本人画家としていち早くオランダの巨匠フェルメールに注目した洋画家、岩田栄吉(1929~82年)。フェルメールの影響という視点から岩田の作品を見直す展覧会「岩田栄吉の世界 フェルメールへの憧憬(しょうけい)」が横浜市中区の横浜本牧絵画館で開催中だ。
光の表現やモチーフの厳選、絵の具の塗り方の使い分けといった点で、フェルメールの影響が見られる油彩画16点やパリ滞在中に収集した絵はがきやポスターなどの資料が並ぶ。
岩田は渡仏した57年の内にオランダを訪れ、アムステルダム国立美術館でフェルメールの「牛乳を注ぐ女」を見ている。当時の日記には「Vermeerの『ミルクメイド』に面会。入口にて貧血起こしそうになる! 六年間の恋人に遭遇する」とつづっており、日本にいた頃から同作を知っていたことがうかがわれる。同館で購入した「牛乳を注ぐ女」のポスターも展示。繰り返し参照していたという。
岩田の油彩画「アトリエ」はアトリエに座る自画像で、窓から入る柔らかい外光や黒白の市松模様の床、その床の上に置かれた楽器や倒れたつぼといった意味ありげなモチーフが、フェルメール作品をほうふつとさせる。
岩田のめいに当たる横浜本牧絵画館の武田春子理事長は「岩田は、ルーブル美術館でフェルメールの『レースを編む女』を見るのを楽しみにしていた。当時は週に2回くらいしか同作を公開しておらず、その日に合わせて出掛けていた」と思い出を語った。
2019年1月21日まで。毎週火曜と年末年始休館。一般500円。問い合わせは横浜本牧絵画館TEL045(629)1150。