恋をしようがしてまいが、〆切は来るし原稿は書かない限り真っ白のまま。わかっちゃいるけど、書評そっちのけで読み耽ってしまった。
35歳で結婚、45歳で離婚、51歳で再婚(※嫁は20歳年下)。酸いも甘いも噛み分けた、日本を代表する劇作家・松尾スズキ。
本書は、彼のメルマガ「松尾スズキののっぴきならない日常」の人気連載から、一般人から届いた「恋だの愛だの」の人生相談をまとめた一冊だ。
正直、浮世離れした劇作家の突拍子もない、実用性ゼロのアドバイスを期待して手に取りました。しかーし、以下読んで。
「結婚とは人生に幸せのカタチを持ち込むための借金であり、その返済こそが夫婦生活」
「ダメな部分のない男を探してたら、一生なにも掴めません。ダメに可愛いげを感じられるかどうか、です」
「自分のことを好きになってくれたという稀有な事実に対する感謝が足りないんじゃないでしょうか」
「人の携帯を見るのは、人が『思う自由』を侵しているということを説明してあげてください」
「心の中で何を思うかまでは、結婚という制度に縛られるいわれはありません」……。
どうですか。すごくないですか。一部抜粋ですが、圧巻でしょう(結婚とか信頼とかダメ男について語っているとこばっかり抜粋してるのは気にしないでください)。本を閉じる頃には、優しくも鋭い言葉の数々に、すっかり心を軽くしてもらいました。苦い経験と向き合ってきた人だけが持つ、痛みに対する感受性。松尾のそれに触れ、まるで自分まで大事にしてもらっているような気持ちになってくる(錯覚)。
キレイなだけじゃない、正円なんて存在しないいびつだらけの世界で、夢見ず期待せず感謝する、地に足のついた人生相談。いやー名著!迷走する我が同志に配って練り歩きたい気分です。
(朝日新聞出版 1200円+税)=アリー・マントワネット